原子力災害、地域の「声なき声」発信 いわきの老舗旅館に伝承施設

開館準備が進む考証館。里見さんは「原子力災害を見つめ直すきっかけになれば」と話す

 いわき湯本温泉(福島県いわき市)の老舗旅館に、東京電力福島第1原発事故を伝える「原子力災害考証館 furusato」が開設される。避難を余儀なくされた地域の住民や暮らしに焦点を当て、公的な伝承施設ではすくい取れない「声なき声」を発信する。オープンは12日。1号機の原子炉建屋が水素爆発した日に合わせた。

 考証館ができるのは温泉旅館「古滝屋」。16代目の里見喜生さん(52)が約7年間、構想を温めてきた。東日本大震災と原発事故で客数が減り、使わなくなった9階にある約20畳の宴会場を改装した。
 館内には商店街のパノラマ写真や避難者が作った情報紙などを展示する。関連書籍のほか、原発事故で避難した住民が起こした裁判の記録、震災・原発事故関連の記事が載った当時の新聞なども置く予定だ。
 インターネットも活用する。原発事故に関連した映像やDVD、書籍などを登録・目録化し、関心のある人が資料にアクセスしやすい環境を整える。
 里見さんが民間の伝承施設を整備しようと考えたのは、2013年に熊本県水俣市を訪れたのがきっかけ。水俣病に関する公設、私設の伝承施設を回り「公的施設を補う、みんなの手による施設が必要だ」と思い至った。
 東京の大学生がボランティアで宴会場を改装してくれたが、迷いもあった。目に見えず、多面的で現在進行形の放射能という被害がある中で「どう展示しても、誰かに何かは言われてしまう」。それでも仲間の助けを得ながら資料を集め、開館にこぎ着けた。
 一般に無料開放する。展示の内容を固定するつもりはない。原発事故の影響を受けた地域ごとに定期的に入れ替えたり、来館者の意見を取り入れながら柔軟に変えていったりしようと考えている。
 考証館では、意見交換会や被災地を巡るスタディーツアーなども計画する。7年越しの思いを形にする里見さん。「地域の日常が原発事故で何を失ったのか。いろんな立場の人が原発事故に向き合い、考える契機となる場にしたい」と話す。

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