<手腕点検>涌谷町・遠藤釈雄町長 経営難の町国保病院、財政再建に挑む

 東日本大震災から10年がたった今年、地方自治の現場は新型コロナウイルス感染症との闘いに引き続き追われた。少子高齢化や人口減少、地域経済の疲弊も深刻化。難局のかじ取りを担う市町村長は地域の負託に応えているか。住民や関係者の声を交えて検証する。

財政再建を検討する有識者会議で、町国保病院の担当者と言葉を交わす遠藤町長(左)=26日、涌谷町役場

 2019年5月、混乱の中での就任だった。涌谷町の遠藤釈雄町長(70)は、前町長の急死を受け、後を引き継ぐ形で町議会議長から町のリーダーに転じた。

 町は同年1月、2021年度に町財政が赤字になるとして「財政非常事態」を宣言。一般会計から町国保病院への支出がかさみ、町財政を圧迫していた。重い課題を背負った中での就任だった。

 町は医療と介護、福祉を一体的に提供する包括ケアシステムを全国に先駆けて構築。町国保病院はシステムの中核施設だが、病床稼働率の低迷や医師不足により慢性的な経営難が続く。

 町長就任後は、状況改善のために座右の銘「一点突破」を地で行った。県から副町長を招き、コスト意識を徹底。有識者会議を設置し病院の経営改善に乗り出した。後援会長の中村功・元県議(71)は「パフォーマンスをせず、決めたことは形にしてきた」と高く評価をする。

 遠藤町長は「地域包括ケアを発信し続けてきた病院だ。収支だけではなく、気軽に立ち寄れる求心力のある病院を目指してほしい」と強調している。

 だが収益構造の改善は難航している。昨年度の一般会計からの繰り出し額は3億8000万円を見込む。財政再建計画で示した額の約1・65倍で、さらに上限4億円の一時貸付金枠を設けて資金不足をしのいだ。

 今月26日の有識者会議では、県担当者が「このままでは病床数(減少の)見直しは避けられない」と指摘。厳しい現状を印象付けた。

 町自体も苦しい。貯金に当たる財政調整基金は残高6億8000万円。昨年度は回復傾向に転じたものの、全国の人口規模が同水準の市町村に比べ低い状態が続き、余裕のない財政運営を強いられている。

 一方で、結果を出した例もある。企業誘致だ。「雇用の場があれば、農村部の人口流出を抑えられる」と訴え、前町長時代に停滞した鶏肉加工場の誘致を実現した。

 業者の要望に応じて、工場までの町道を改良。町議会議長と共に地権者の元に足を運び、土地取得の了解を取り付けた。

 地道な取り組みの成果といえる。ただ、「財政危機と新型コロナウイルス禍という苦境で、町を率いるには物足りない」という批判がつきまとう。

 新型コロナワクチンの高齢者接種では当初の完了見込みが県内で最も遅く、批判を受けて医師確保に追われた。将来の病院像についても「具体的なあり方は話し合いの中で出てくる」と控えめな姿勢を崩さない。

 町議を5期20年務めた長崎達雄さん(88)は「具体的な考えを出さないから、町長になって2年たっても町政が前に進まない」と語る。

 「雪の結晶の核は空気中のホコリ。せめてそのホコリになれればいい」と語る遠藤氏。次世代への地ならしを自負するが、決断を恐れず、率先して難局の打開を図る姿勢が欠かせない。
(小牛田支局・横山浩之)

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