<手腕点検>丸森町・保科郷雄町長 災害対応で庁内一丸

 東日本大震災から10年がたった今年、地方自治の現場は新型コロナウイルス感染症との闘いに引き続き追われた。少子高齢化や人口減少、地域経済の疲弊も深刻化。難局のかじ取りを担う市町村長は地域の負託に応えているか。住民や関係者の声を交えて検証する。

 2019年10月13日、台風19号の猛威が過ぎ去った宮城県丸森町の早朝。前日から町役場に詰めていた保科郷雄町長(71)は、周辺に広がる冠水を町長室の窓から眺め、自らに言い聞かせた。

 「職員たちとなら乗り越えられる」

 東京電力福島第1原発事故の放射線対策に庁内一丸で取り組んだ自負があった。後日、この思いを全庁訓示で伝えると、涙を流す職員もいた。

 現在3期目。町議を経て10年12月に初当選した。就任後間もなく発生した原子力災害への対応で職員との信頼感を深めたと言える。

 
平時はボトムアップ型の施策形成で職員のやりがいを高める。インバウンド(訪日外国人観光客)誘客や起業支援、移住促進策などが職員の発案で形となり、「働く場として町役場の魅力になっている」(ベテラン職員)との声が上がる。

 台風被害からは1年9カ月が過ぎた。町議会台風19号災害対策調査特別委員会の佐藤吉市委員長(71)は「町長が率先して動き、職員を引っ張ってきた」と評価。功績に水害時の活動拠点「河川防災ステーション」の設置計画を挙げる。

 国土交通省と連携し、阿武隈川沿いに24年度までの完成を目指す。佐藤委員長は「職員が情報を集め、町長が国交省へ積極的に働き掛けたのだろう」とみる。

 一方、意思決定には慎重な手順を踏む。「町民や議会の声を聞き、庁内で検討させ、最終的に反対が出ない案にまとめている」。佐藤委員長はこう分析し、「決断までの周到な姿勢がスピード感の無さと映る場合もある」と懸念も示す。

 ただでさえ本年度、復興に停滞感が漂い始めた。災害公営住宅の建設予定地は軟弱地盤が判明。整備は難航が想定される。中山間地の農地は被災箇所が多く、6月だった着工の完了目標は9月に延期。道路や河川を含め、復旧工事業者の確保もままならないという。

 議会では「閉塞(へいそく)感を広げてはいけない」と注文が付く。指導力で打開したい局面だが、現場への負担を憂慮する声は根強い。菊池修一議長(64)は「トップダウンに切り替えても、人手不足の中では圧力になりかねない」と指摘。もともと公共土木の技術職員が少なく、他の自治体からの派遣などでしのいでいる状態だ。

 難題が山積しながらも、町長は常々「一日でも早く被災前の暮らしを取り戻す」と口にする。スピード感は復興の生命線。限られた陣容の中でいかに職員の力を発揮させ、庁外からの協力を集めるか。一歩踏み込んだ調整力が求められる。
(角田支局・田村賢心)

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