<手腕点検>富谷市・若生裕俊市長 「市民第一」で即断、偏りに懸念も

 東日本大震災から10年がたった今年、地方自治の現場は新型コロナウイルス感染症との闘いに引き続き追われた。少子高齢化や人口減少、地域経済の疲弊も深刻化。難局のかじ取りを担う市町村長は地域の負託に応えているか。住民や関係者の声を交えて検証する。

新型コロナウイルスワクチンの集団接種会場で職員から報告を受ける若生市長(中央)=7月14日、富谷市一ノ関の富谷スポーツセンター

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う市民への支援策として、富谷市が「市独自」として打ち出した事業は約80に上り、多くは他の自治体に先駆け実施した。

 「スピード感」「市民ファースト」。若生裕俊市長(57)の信条が実践された形だ。渡辺俊一市議会議長(69)は「何事もいち早く手掛け、市民に安心感をもたらした」と評する。

 国が2020年度、国民に一律10万円を支給した特別定額給付金を巡る対応は象徴的だった。

 市は20年4月21日に県を介し通知を受け、同27日に準備に着手。4日後の5月1日には約2万世帯に申請書を発送した。「止められるなら、他の業務は止めていい」と若生市長が指示を出し、職員約50人が休日返上で作業に当たったという。

 19、20年度に副市長を務めた西村一慶さん(57)=県企業局副局長兼公営事業課長=は「決断が速い。独断に陥らず、職員や市民の意見を聞き、優先順位を整理していた」と振り返る。

 若生市長の発案で市は20年度、同給付金の対象外となった新生児にも、1人当たり10万円を支給した。

 市が重視する子育て世帯の支援をうたい、いち早く手掛けた事業だったが、市は21年度の実施を見送った。

 「コロナの影響による収入減は今も解消していないのに、新生児への給付を年度で区切るのは、どうなのかと思う」

 10月に第2子の出産を控える同市の主婦(39)は疑問を口にする。妊娠後にパート勤務を辞め、コロナ禍で夫の時間外手当も削減。世帯収入が大幅に減った現状を訴える。

 21年度の新生児への給付見送りは、市議会6月定例会で議題に上った。若生市長は21年度に国の給付事業が示されていないことを理由に挙げる一方、「子育て支援を充実させる」と答弁した。

 一般質問で取り上げた金子透議員(61)は若生市長の姿勢をおおむね評価しつつも「ともすれば、パフォーマンスに走りすぎ、偏りが生じているように映る」と指摘する。

 数々の即断で集めた信望は、後に一貫性や公平性を欠く事態が続けば、失望へと転じかねない。

 近隣の3町村と共に手掛ける新型コロナのワクチン接種でも、市が接種対象の年齢拡大や接種券の発送を先んじた場面があり、周辺自治体の関係者から「足並みをそろえてほしかった」と不満の声が漏れた。
(富谷支局・肘井大祐)

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