<手腕点検>塩釜市・佐藤光樹市長 現場と対話、独自政策へ反映 職員束ねる指導力課題

 東日本大震災から10年がたった今年、地方自治の現場は新型コロナウイルス感染症との闘いに引き続き追われた。少子高齢化や人口減少、地域経済の疲弊も深刻化。難局のかじ取りを担う市町村長は地域の負託に応えているか。住民や関係者の声を交えて検証する。

塩釜高生との意見交換会に出席した佐藤市長(右)=7月27日、塩釜市泉ケ岡の塩釜高

 妊産婦へのタクシー助成券や市外在住学生への地場産品詰め合わせ送付、ひとり親世帯や独居高齢者、外国人技能実習生への食料品支援-。塩釜市が新型コロナウイルス対策で実施した独自事業の一部だ。

 「足りないところにどう手当てするか。現場を回るとアイデアが出てくる」と佐藤光樹市長(53)は語る。政治信条は対話と議論。公務の合間を縫って地元事業者に顔を出し、町内会との座談会や高校生との意見交換会にも出席する。

 県から招かれた佐藤洋生副市長(56)は「施策を考える上で市民や事業者の声を聞けと口を酸っぱくして言う。市長の発案からかゆいところに手が届く支援ができている」と明かす。

 県議だった父光輔氏や参院議員の秘書を経て県議4期。県議会議長も務めた。豊富な政治経験や人脈を武器に2019年の市長選で初当選し、来月に1期目の折り返しを迎える。足元で進む人口減や高齢化への対応は待ったなしの課題だ。

 西村勝男市議(71)は「コロナ対策への評価は高いが、多くは対症療法にとどまる。中長期的な数値目標を設定し、課題を解決していくような取り組みはまだまだだ」と努力を促す。

 市は昨年度、庁舎整備や学校再編など七つの重点課題について検討部会を立ち上げ、今後の方針を議論した。そのうちの「ごみ処理事業」は本年度、新たな清掃工場を単独整備するなどの方向性を示した。

 しかし、基幹産業である水産業の振興や浦戸諸島の再生は一筋縄ではいかない。佐藤市長は「市民や受益者に負担増をお願いし、規模縮小や廃止を検討しなければいけない事業もある」と決意を語る。

 山積する課題の解決に向けた市政運営に対し、複数の幹部は「トップダウンの政治手法が市長頼みを招き、ボトムアップの政策立案が弱い」と懸念を示す。7月末で部長級の職員が定年前に退職するなど人材を生かし切れていない部分もある。

 市議会の伊藤博章議長(58)は、企業の幹部らを講師に招く若手職員対象の「市長塾」が5月に始まったことを挙げ、「市役所の能力を最大限に発揮するため、考えを代弁できる側近や、共感してもらえる仲間を増やすべきだ」と求める。

 来年度には市の最上位計画である第6次長期総合計画(2022~31年度)が始まる。策定作業には若手職員のプロジェクトチームも参加し、9月には審議会が答申案を取りまとめる。課題解決に向けてどんなビジョンを打ち出すのか。トップを軸とした市の総合力が問われている。
(塩釜支局・高橋公彦)

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