31音が伝える心象風景 仙台の歌人工藤さんの歌集を短編映画化

映画「世界で一番すばらしい俺」のワンシーン
工藤さんの第1歌集

 仙台市の歌人工藤吉生さん(41)の第1歌集「世界で一番すばらしい俺」(短歌研究社)が同名の短編映画になった。16~20日、北海道夕張市である「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2021」のスペシャルプログラムで公開される。短歌を前面に出したショートストーリーは極めて珍しい。31音が伝える心象風景が、映像と相まって深まる新しい表現スタイルは話題となりそうだ。

 歌集は2020年7月発刊。短歌結社「未来」の未来賞(17年)、短歌研究新人賞(18年)の受賞作、河北歌壇入選作などを収録する。映画は中城ふみ子賞次席(18年)の連作「校舎・飛び降り」(50首)の世界を物語風に映像化した。

 作品は13分。工藤さんが同じ高校の音楽部員に失恋し、自殺未遂を起こした出来事が題材。せりふはなく、主役の俳優剛力彩芽さんが27首をナレーションのように読みながら物語は進む。<忘れずにいてもらうため死にたいとマジで思うし理解されたい>など、思春期の青年の心の揺らぎを静かな映像で描いた。

 監督を務めた映像ディレクター山森正志さん(41)=東京都=が、歌人の永田和宏さんと妻河野裕子さんの共著「たとへば君 四十年の恋歌」を読み短歌に魅了されたのがきっかけとなった。仕事仲間でもある剛力さんがたまたま工藤さんの歌集を愛読。山森さんに紹介し、映像化が始まった。

 山森さんは同歌集の魅力を「人間くささをダイレクトに感じた。不思議な重力を持って読む人の心に着地する」と話す。永田さんらの言葉に触れ「歌は人の心の深いところに触れられる気がした」と言う。インターネットや新型コロナウイルス禍で人間の内面の触れ合いが減る中、「他者の内面に触れることで人は優しくなれる」と狙いを語る。

 工藤さんは「原作に忠実に作っていただいた。歌集の陰の部分、絶望、悲しみ、苦しみを引き出している。剛力さんの表現力にも感銘を受けた」と感謝する。

 コロナ禍のため、作品は動画配信サービスのHulu(フールー)で配信される。

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