松島湾で海外向けカキ生産 潮間帯養殖採用、殻付きのまま出荷へ

 水産加工・販売のヤマナカ(石巻市)が、宮城県塩釜市浦戸諸島の生産者や商社などとタッグを組み、海外市場向けのカキの養殖に取り組んでいる。専用バスケットに入れたカキが、干潮時に空気にさらされる「潮間帯養殖」を採用。生命力が強く、殻付きの活ガキでの海外流通が可能になるといい、11月に香港、シンガポール、ロシアに初輸出する計画だ。

11月の初輸出に向けて、カキの成育状況を確認する高田社長(中央)と鈴木さん(右)ら=22日

 「松島湾オイスターリゾート計画」と銘打ち、担い手育成も含めた松島湾の養殖漁業振興を図るプロジェクトの一環。2020年12月に塩釜市・野々島近くの海で、宮城県女川町産の稚貝約2万個の試験養殖を始めた。4~6センチに成長し、1万3000個程度の出荷ができる見込みという。

 潮間帯養殖は欧米の干潟などで用いられる方式。干潮時は海面の上に、満潮時は海中になる位置でカキを育てる。野々島ではオーストラリアのSEAPA社の専用バスケットを使う。

 潮の干満でカキが海面を出入りし、日光や空気にさらされる。貝柱は大きく、貝殻の密閉率や保水力が高まり、水揚げ後も冷蔵で3~4週間程度生存するとされる。ばらばらの状態で養殖するシングルシード式により、バスケット内で転がるなどして殻の表面も滑らかになる。

 県内では、いかだなどからつり下げる垂下式養殖によるむき身での出荷が主流。効率よく量産できるが、水揚げ後の生存期間は数日で、活ガキでの輸出は難しかった。

 海外では小ぶりで殻の形が整ったシングルシード式の殻付き活ガキが人気で、取引価格が高い。冷凍の県産カキなどの輸出を手掛けてきたヤマナカの高田慎司社長(53)は「海外市場はさらに拡大が見込まれる。ニーズに合うカキをつくりたい」と話す。

潮間帯養殖の専用バスケット。干潮時はカキが海面の上で日光や空気にさらされる

震災以降、養殖業者や「むきこ」減少

 宮城は国内2位のカキ産地だが、東日本大震災以降、養殖業者や殻をむく「むきこ」が減少。20年の生産量(殻付き)は約1・8万トンで、震災前の10年(約3・6万トン)の約半分にとどまる。高田社長は「輸出までの体制を整えて収益性の高い養殖を実現し、後継者育成につなげる」と意気込む。

 計画に協力する野々島のカキ漁師鈴木宏明さん(74)は「殻のまま出荷できるのは魅力。修正点はあるが、やれそうな感触だ」と手応えを語る。来年の出荷に向けて野々島の海で自然採苗した稚貝の養殖もスタートしており、徐々に生産量を増やす考えだ。

 計画は、輸出に向けた産地形成を支援する国のGFPグローバル産地づくり推進事業の認定を受け、県、塩釜市、県漁協などとも連携。将来はより水深が浅いエリアでの養殖や観光への活用も目指す。

 24年度の輸出量目標は100トン。宮城から米国、フランスなどにカキの稚貝が輸出された歴史的な経緯も踏まえながら、ブランド化を図る。

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