河北抄(10/1):戦後、鉄道の復旧に合わせて列島中を汽車で…

 戦後、鉄道の復旧に合わせて列島中を汽車で旅した作家の内田百閒は70年前、山形から仙山線に乗っている。紅葉にはあいにくの雨。それでも、この季節ならでは沿線の風情を『奥羽本線阿房列車 後章』に美しく描写している。

 <奥新川駅を過ぎると、次第に向うの空が明かるくなった><ずっと向こうの先の太平洋の水明かりだろう。その辺りから赤い紅葉の山の間に、芒山の山肌の色が交じって、目先の趣を変えた>
 気晴らしに旅にまつわる本ばかり読んでいた自粛生活も、とりあえず出口を迎えたようだ。いきなりの遠出は気が引けても、近郊で密を避けながら秋の景色を楽しむくらいは誰の迷惑にもなるまい。

 仙山線に乗る数日前、百閒は紅葉見物のため、わざわざ横黒線(現在の北上線)にも乗っていた。双方を見比べて、こうも記している。<面白山隧道の前後の景色は横黒線の沿線に劣らない様である。こちらの方が、渓谷が深いだけ勝れているかも知れない>
 まん延防止等重点措置が解除されて初の週末だ。身近な絶景を探してみたい。

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