原発事故、追加賠償の相談増加 「時効10年」対象外も

 東京電力福島第1原発事故によって大きな被害を受けた福島県南相馬市で、市民からの追加賠償の相談が増加傾向にある。避難時に家族が要介護認定を受けていた場合などは、賠償請求の時効(10年)にかかわらず、さかのぼって損害が認められるケースがあるためだ。市は弁護士資格を持つ職員を採用し、相談業務に力を注いでいる。(南相馬支局・早川俊哉)

原発事故の被災者が連日訪れる南相馬市役所の窓口。相談後、ADRを申し立てる人も多い

南相馬市、弁護士雇用し対応強化

 市復興企画部の職員として原発事故損害賠償の相談を担当する岩本尚光弁護士(30)によると、7月から3回、市の広報誌で追加賠償の要件などを具体的に説明したところ、6月には8件だった相談件数が7月に21件、8月は35件と増えた。9月も約30件だった。

 相談は「要介護認定されていた親と共に県外へ一時避難し、地元へ戻ったものの親の体調が悪化してしまった」といった内容が目立つという。避難の際、介護が必要な高齢者や障害者と一緒だったり、乳幼児を連れていたりした市民は少なくないとみられ、相談件数増につながっている。

 こうしたケースでは、既に支払われている原発事故被災者への慰謝料(通常は1人月額10万円)がさかのぼって増額される可能性が高く、「ADR(裁判外紛争解決手続き)の原子力損害賠償紛争解決センターに申し立てれば、差額分を受け取ることができる可能性が高い」(岩本弁護士)という。

 被災者が個々の事情を訴えて認められるADRの和解事例が蓄積されつつあり、新たに賠償の対象になるケースも増えている。

 南相馬市は原発事故後、弁護士を雇用して賠償の相談に応じてきたが、昨年2月から今年6月に岩本弁護士を採用するまで不在だった。6月まで福岡県の法律事務所に所属していた岩本弁護士は「やりがいのある仕事。10年過ぎてもまだ解決していない原発事故の深刻さを感じる」と話す。

 原発事故に加えて今後、第1原発処理水の海洋放出による被害に関する相談が出てきそうだ。南相馬市は処理水問題でも、岩本弁護士を中心に対応に取り組む方針だ。

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