プラごみ削減へ若者奮闘 <海洋異変・宮城の水産現場から>

稲穂が揺れる宮城農高の田んぼで肥料用のプラスチックを確認する生徒たち=名取市
稲作で使われているプラスチック被覆の肥料

 全国有数の水産県・宮城の海に異変が起きている。地球温暖化や東日本大震災による海況変化を背景に、海藻消失や主力魚種の不漁といった問題が顕在化。プラスチックごみ流入が生態系に及ぼす影響も深刻になっている。豊穣(ほうじょう)な恵みをもたらす大海を次代へどう引き継ぐか-。「第40回全国豊かな海づくり大会」に合わせ、浜の現状や関係者の動きを追う。

宮城農高で研究

 水田と海のつながりを強く意識するようになったきっかけは、小さな殻だった。

 名取市内陸部にある宮城農高の水田に9月下旬、農業科作物専攻の3年生や教諭計8人が集まった。研究テーマは「マイクロプラスチックの課題」。稲穂の株元に目を凝らし、数ミリのプラスチックの粒を次々と見つけた。

 プラスチックで包まれ、ゆっくり溶け出し長く効く肥料が、稲作で広く使われている。農家の追肥の重労働を軽減するメリットもある。

 農林水産省によると、プラスチックで覆われるなどした「緩効性肥料」は2018年、国内で約12万3000トン生産されたが、詳しい利用実態は分からないという。

 研究に携わる3年菅原愛斗(まなと)さん(17)は「プラスチックの肥料は実家の田んぼでも使われている。家族はプラスチックと知らず、生き物の卵かと思っていた」と明かす。

 研究が始まったのは20年。糸口は海にあった。

 東日本大震災の津波で被災した旧校舎に近い閖上の浜辺で、清掃活動をしていた生徒が小さな丸い物体を発見。肥料を覆うプラスチックと判明し、田から川を経て流れ着き、生態系に影響を及ぼしている可能性が浮かんだ。

 研究を指導する山根正博教諭(43)は「肥料のプラスチックは小さくて拾えず、流出した時点でマイクロプラスチックになってしまう。本を絶たなければ問題は解決できない」と話す。

 約20人の研究メンバーは肥料メーカーや地元企業と連携してコメの栽培試験に臨む。畑作で利用される「ウレアホルム」というプラスチック不使用の肥料と生育状況を比較。草丈や茎数、葉色がほぼ同じという結果が出た。

 菅原さんは「プラスチックゼロの肥料が少しでも世の中に普及し、プラスチックごみを減らせれば、水田と海洋の環境を守っていけるのではないか」と見据える。

漂着物を飾りに

 宮城県内の海岸線の総延長は約830キロに及ぶ。東松島市の矢本海岸で県が20年度に行ったモニタリング調査では、プラスチックが海岸漂着物の7割を超えた。

 18年発足の環境系学生団体「海辺のたからもの」(仙台市)。若林区荒浜の海岸でプラスチックごみを拾い集め、子ども向けのワークショップを開いてアクセサリー作りに取り組む。

 元代表の畠山紳悟さん(27)は子どもとの対話を大切にする。プラスチック原料や人工芝、肥料のプラスチックを見せたり、触れさせたりしながら、海洋ごみの問題を伝えてきた。

 日本海に面する潟上市で育った畠山さん自身、幼い頃から海岸の清掃活動に関わってきた。「何が正しくて、何が間違っているのか、自分で考えることが重要だと思う」と信じる。

 畠山さんと交流のある貴田喜一さん(76)は、震災の津波で荒浜の自宅を失った。災害危険区域に指定され住めなくなった古里に、集いの場「里海荒浜ロッジ」を構え、通い続ける。

 「若い人たちに時代を背負って頑張ってほしい」と畠山さんらにエールを送る貴田さん。豊かな海という財産が未来に引き継がれることを願っている。
(報道部・水野良将)

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