磯焼け回避へ試行錯誤 <海洋異変・宮城の水産現場から>

養殖するアラメの種苗を引き揚げる小松さん。海中投入するブロックに根付かせる=5月、気仙沼市大島・浦の浜(宮城県気仙沼地方振興事務所提供)

 全国有数の水産県・宮城の海に異変が起きている。地球温暖化や東日本大震災による海況変化を背景に、海藻消失や主力魚種の不漁といった問題が顕在化。プラスチックごみ流入が生態系に及ぼす影響も深刻になっている。豊穣(ほうじょう)な恵みをもたらす大海を次代へどう引き継ぐか-。「第40回全国豊かな海づくり大会」に合わせ、浜の現状や関係者の動きを追う。

藻場の面積半分に

 宮城県沿岸に繁茂するマコンブやアラメ、アカモク。海藻には多様な生物が宿り、アワビなどの「磯根資源」も育む。豊かな海を形成するその藻場が危機に直面している。2015年に1954ヘクタールだった主な面積が、19年は半分以下の867ヘクタールに縮小したことが衛星画像分析で判明した。

 海藻が消える「磯焼け」だ。海水温の上昇により活性化したウニの摂食量増加や、海藻の成長速度低下が要因。東日本大震災の地盤沈下で海底の環境が変わり、ウニが増え食害が悪化したとの漁業者の声もある。

 県は昨年8月、藻場回復の行動計画をまとめた宮城県藻場ビジョン=?=を策定した。ハード整備とソフト対策で、29年度までの10年間で藻場を1770ヘクタールに倍増させる目標を掲げる。

 ただ、海藻が根付く地質や水流の条件は浜によって異なる。県は各海域で漁業者らと対策を進めるが、試行錯誤の連続でもある。

 気仙沼市大島の漁業者は大型コンクリートブロックを23年に海中投入し、養殖した海藻を根付かせる県の計画に待ったをかけた。「つるつるした石の表面に海藻は定着しない」。浜の誰もが経験から、単に石塊を沈めて終わると懸念した。

 今年4月には漁業者や県、有識者らで「気仙沼大島磯焼け対策部会」を設立し、計画を効果的にするための議論を重ねた。アラメの種苗が根付きやすい石質や石の粗さを見極める比較実験を10月に行い、最も繁茂が期待できる条件に表面を加工したブロックを投入しようと決めた。

 カキ養殖を営む県漁協気仙沼地区支所大島出張所運営委員代表の小松武さん(46)は「藻場再生の活動は目先の利益にはならない」と苦笑する。「何もしないで、昔は良かったと子や孫に言えない。みんな豊かな海をつなぎたい一心だ」

消費通じ森守る

 大いなる海には、栄養の供給源である山の存在も欠かせない。近年、消費活動と連動し森林や海洋を保全する試みも始まった。

 塩釜市で海産物の卸と小売りを手掛ける今野商店は16年から約1年間、県産のりなどを「カーボンオフセット商品」として販売した。カーボンオフセットは日常生活や経済活動で排出される二酸化炭素などの温室効果ガスを、森林保全などの排出量削減活動に投資して埋め合わせる考え方だ。

 今野商店は、登米市の市有林整備で吸収された二酸化炭素削減分のうち10トンを購入。1商品の販売につき1円を森を育む支援に回した。

 社長の今野武雄さん(65)は「既存顧客の一部や環境意識の高い客には好評だったが、当時はまだ認知度が低く、バイヤーとの商談で苦戦した」と振り返る。

 保全対象を森林から海藻などの海洋生態系に置き換えた「ブルーカーボンオフセット」も注目される。横浜市が独自に創設した制度で、東北では岩手県普代村が20年に養殖のワカメとコンブを対象に参加した。

 二酸化炭素を吸収し、酸素を供給するのも海藻の重要な役割だ。今野さんは「温暖化対策は待ったなしだ。自治体が音頭を取れば参加企業が増え、住民の意識も高まる」と展望する。
(気仙沼総局・鈴木悠太、塩釜支局・高橋公彦)

[宮城県藻場ビジョン]宮城県七ケ浜町以北の9海域を対象に、海藻を根付かせるコンクリートブロックの海中投入や、ウニの除去や海藻を育てる海中造林により藻場の回復や保全を図る。10年間の事業費は計約10億円を見込み、負担割合は国50%、県35%、自治体15%。

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