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「破産者さらし」ウェブでやまず 官報を悪用、法の隙間突く

 自己破産した愛知県内の投稿者から「破産者が掲載されたウェブサイトを見つけた。自分の名前、住所もあった」との趣旨の訴えが中日新聞(名古屋市)のユースク取材班に寄せられた。名前をさらされた人は結婚や就職などで不利益を受けかねない。もともと破産者の情報は官報に個別に掲載されているが、それらをデータベース化した複数のサイトは昨年夏、政府の停止命令を受けたはず。どういうことなのだろうか。

 投稿者によると、自身は仕事で受けたパワハラなどで精神的に追い詰められて働けなくなった。自動車の維持費が払えなくなるなどし、借金が200万円近くまで膨らんだという。弁護士の勧めもあって昨年秋、自己破産を申請した。

 ところが最近、破産者情報を集めたサイトで自分の名を発見。「がくぜんとした。職場で見つかったら、と不安で仕方ない。コロナ禍で金銭的に苦しむ人が増える中、こんなものが残っていていいのか」と憤る。

 この情報サイトでは、無料で見られる掲示板に、破産者とみられる多数の氏名と住所が毎日、書き込まれている。同サイトは、以前はこうした情報を削除する手順として、削除の希望者に対し、自身のデータを特定するために必要な情報をまず開示するよう求めていた。データの特定作業のための費用は2800円とされたが、取材後にその文言はなくなっていた。

 破産者の情報サイトを巡っては、政府の個人情報保護委員会が昨年7月、別の2サイトに運営停止を命令し、いずれも閉鎖した。同6月には個人情報保護法が改正され、官報の破産情報をデータベース化してネットで公開する行為は、違法とするガイドラインが定められた。今回のサイトは、来年4月の法施行までの間隙(かんげき)を縫ったとみられる。

掲示板の投稿は「改正法の対象外」

 ユースク取材班がサイトの運営会社を訪ねたところ、運営者の男性は「誰かが破産者の情報を掲示板に貼り付けている」と主張。掲示板の管理責任を問うと、「消しているが追い付かない」と話した。一方で、サイトに関しては「公共性が高い事業。掲示板の投稿は改正法の対象外だ」と説明し、改正後も続ける考えを示した。

 そもそも官報に破産者が掲載されているのはなぜか。破産法では、債権者が破産手続きに関与する機会を与えるため、としている。

 今回のサイトについて、破産者情報の扱いに詳しい板倉陽一郎弁護士は「制度や法改正の時期を熟知して確信犯的に行っている」と指摘。「個人の自己破産の場合、債務は消費者金融や税金などに限られる。企業の倒産と同じ扱いで周知する必要があるか議論すべきだ」と話す。

 投稿者は不安げに語った。「ゆがんだ正義感が怖い。法施行後も名前がさらされ続けるのではないか」
(中日新聞提供)

[自己破産]自分の資産や収入で返せない借金を抱えた債務者が、自ら裁判所に申し立てて裁判所が支払い不能と判断した場合、財産を処分して債権者に分配。残った借金を免除する裁判上の手続き。2016年には約6万4000件だったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響などで、20年には約7万1000件に増えている。債務免除により、債務者に立ち直る機会が与えられる一方、一定の公職や資格を必要とする職業に就けなくなる。また、債権者に破産手続きを知らせるため、官報で名前や住所が掲載され、結婚や就職などで事実上の不利益を受けるケースがある。

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