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外国人労働者の接種、実態把握できず 国システムに「国籍」項目なし

外国人からワクチン接種の相談を受け付ける仙台多文化共生センター。職員が予約手続きを手伝うこともある

 「外国人労働者の新型コロナウイルス感染が心配だ。ワクチン接種状況を知りたい」。宮城県の食品製造会社に勤務する男性(38)から「読者とともに 特別報道室」に依頼があった。取材の結果、在留外国人の接種が感染拡大防止の盲点になっている現状が浮かび上がった。

 県によると、昨年末時点で県内の在留外国人は2万2890人。留学生が約5100人、技能実習生が約4300人と多い。

 男性の会社では9月に入り、県内2カ所の工場で外国籍のアルバイト従業員約20人の新型コロナ陽性が判明した。いずれも仙台市内の専門学校生で、ワクチン未接種者もいたという。

 市は専門学校でクラスター(感染者集団)が起きたと断定。この学校では同月末までに計40人の感染が確認された。

 2工場では6月以降、他事業所と合同で職場接種を実施したが、同月下旬に国が申請の受け付けを一時停止したため、従業員のごく一部が接種した段階でストップしてしまった。

 外国籍約1万3900人が住む仙台市内では昨秋にも、専門学校生ら100人以上が感染するクラスターが発生。在留外国人のワクチン接種は感染拡大防止に必要なはずだが、市と県、厚生労働省は「外国人の接種率は集計していない」と口をそろえる。氏名や接種歴などが登録される国のワクチン接種記録システム(VRS)に国籍の項目がないためだ。

 接種を促す手だては講じられているのか。市は多言語表記の広報誌を夏前に全戸配布したことを挙げ「できる限り広報に努めている」と強調。県は「9月に専門学校や受け入れ企業などに接種促進を呼び掛ける文書を送った」と説明する。

 言葉の壁は依然あり、外国人の生活を支援する仙台多文化共生センター(青葉区)の窓口には「予約サイトが日本語で分からない」などの相談が寄せられているという。

 2工場では外国籍従業員が全体の半数超を占める。既に勤務シフト調整に支障が生じており、さらに感染が広がれば操業停止に陥る可能性があるという。

 取材結果を聞いた依頼者の男性は「行政の危機感は希薄で不安を覚える。専門学校ごとの接種などは、できないのだろうか」と話した。
(岩田裕貴)

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