<まちかどエッセー・津田公子>話す、聞く、醍醐味

 つだ・きみこさん 川柳作家。石巻市出身。日本大卒。元中学教諭(主に仙台市、石巻管内)。川柳宮城野社同人、県川柳連盟理事も務める。県芸術祭川柳部門文芸賞(県知事賞)を受賞。河北新報創刊100周年記念河北文学賞川柳部門佳作。句集に「風の中」。東松島市在住。

 片道15分ほどの郵便局へは、運動を兼ねてよく歩く。一本道だ。まれに人と会い、会釈して通り過ぎる。サークル活動の仲間だと立ち話となるのだが、今はお互い遠慮してそれはできない。手を振って笑顔で通過。

 日常で話す機会が昨今は少なくなった。ぼんやりした生活の場面で電話の対応や、宅配業者とのやりとりがとても新鮮だ。その間、自分を取り戻した気分になる。読む、書くとは違ったパワーが話す、聞くにはある。

 テレビで見受ける小学生のコメントにそつがない。少し裏切られる。話すことでは中学生以上になると、各種のスピーチ大会がある。特に中学生には夏休み中に弁論文が課せられた。日常の生活体験の気付きから始まって論は展開される。これを元に発表となる。弁論の審査基準は、論旨、表現、態度などとなっている。県や全国など大きな弁論大会で入賞した、あの若き弁士たちは、今どうしているだろう。大会が多かった9月、キンモクセイが香りだすと思い出される。

 子どもが最初に聞くスピーチは校長先生のお話。児童生徒が目を輝かせて聞き入る名手もおられた。話題が新鮮で、お説教くさくない。程よい長さも大切だ。お話は種々の組織の長の腕の見せどころ。人々の士気につながる。

 何人かのアナウンサーと接して感じることは、たとえ小さな言葉でもすくい上げ、すぐに明快な反応があることだ。事後の対応の確実さもある。話す、聞くことを大切にするプロの態度に舌を巻く。

 時は10月。秋の結婚式シーズン到来。コロナ禍により従来のような式も宴も少なくなっているらしい。

 披露宴での忘れられないスピーチがある。その方、Yさんと私は初対面。同じテーブルで隣席であった。宴が始まり、指名を受けて彼女は来賓祝辞を述べられる。新郎新婦への祝意の後、話は家族論に及ぶ。彼女の実弟をちくりと刺して会場を沸かせた。言葉の一つ一つが胸にぴたりと届く。直球も変化球も織り交ぜてある。柔らかな声と、堂々たる態度で、温かく場を包み込んで話は結ばれた。一瞬の静まりとその後に大きな拍手。

 Yさんは、プロ野球東北楽天の元監督、星野仙一さんのお姉さまだった。
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(川柳作家)

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まちかどエッセー

 仙台・宮城在住の執筆者が、それぞれの活動や暮らしで感じたことをつづります。

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