河北春秋(10/8):ギリシャ神話の英雄プロメテウスは最高神ゼ…

 ギリシャ神話の英雄プロメテウスは最高神ゼウスから火を盗み、人間に与える。人間は高慢になり、怒ったゼウスは災いの詰まった箱をパンドラという女に持たせて地上に送る。好奇心にかられてパンドラは箱を開けてみる▼箱から飛び出したのは、あらゆる悪、不幸、災い。この神話をもとに、予期できない困難の根源を「パンドラの箱」と称するようになった。国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が名づけた「パンドラ文書」もこれにちなむ▼各国の法律事務所や信託業者が保有する膨大な内部資料がその文書で、分析結果が先ごろ発表された。開いた口がふさがらない驚きの内容だ。タックスヘイブン(租税回避地)を利用し、世界の資産家や政治家が税金逃れをしていた実態が明るみに出た▼名前が挙がっているのは各国の政治指導者、国王、有名歌手ら。日本の経済人の名も文書には載っている。ヘイブン(回避地)とヘブン(楽園、天国)は英語のつづりも1文字の違い。富裕層にとっては税金逃れの楽園だったろう▼箱を開けたパンドラは慌てて閉じ、中には「希望」だけが残った。タックスヘイブンというずる賢い抜け道は、国家間の協力でなくすべきだ。不正な手口を許さない工夫の先に「希望」は見えてくるに違いない。(2021・10・8)

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