<東北・米価危機>(中)「ブランド米」も価格二分化

色づいた「福、笑い」の稲穂の実り具合を確かめる安島さん=9月下旬、いわき市

 激化するブランド米の産地間競争に、東京電力福島第1原発事故の被災地から誕生した新品種が挑む。

 今秋本格デビューの福島県産米「福、笑い」。県内61農家が計25ヘクタールに作付けし、130トンの収穫を見込む。主な販路は首都圏の百貨店や高級スーパーで、価格は国内トップ級の1キロ当たり800円程度を目指す。

 原発事故に見舞われた福島産米のイメージ回復という使命も帯びる。いわき市の生産者、安島美光さん(66)が望む。「一粒一粒の味わいや食感がしっかりしていておいしい。首都圏の食卓に並べばうれしい」

意欲低下を懸念

 コメ離れに新型コロナウイルス下の需要減が重なり、「ブランド米戦線」にも異変が起きている。

 象徴的なのが宮城県のだて正夢だ。2021年の作付面積は約920ヘクタールと、デビューした18年の約3倍に広がる一方、21年産米の概算金は前年比4300円(30・6%)減の1万円に沈む。「ブランド米とは呼べない価格水準」(県北のベテラン農家)と、生産意欲の低下を懸念する声が上がる。

 全農県本部の大友良彦本部長は「新銘柄として日が浅く、大変苦戦している」と受け止める。全国の産地が食味の良さやブランドイメージを競い高値販売を狙う中、だて正夢はあえて価格を抑えることで販売棚を確保し、消費拡大を狙う。

 県や農協グループなどでつくる「宮城米マーケティング推進機構」は11月中旬まで大消費地の東京、大阪、名古屋で百貨店と連携したPR事業を初めて展開する。和洋中の弁当やレストランのメニューにだて正夢の新米を使ってもらい、実食の機会を増やし、リピーター獲得につなげる。

 日本穀物検定協会(東京)による食味ランキングで、18~20年産が最上位の「特A」を獲得した岩手県の銀河のしずく。全農県本部の佐竹雅之米穀部長は「単価的にひとめぼれより高く、あきたこまちより収量がある。『冷めてもおいしい』とお客さまの評価が高い」と自信を見せる。生産量を21年の6800トンから24年には3万トン超まで拡大する計画を練り、特約店での販売増加も視野に入れる。

強気の生産量増

 先行きが不透明なコロナ下で、高価格を維持する銘柄もある。山形県のつや姫、青森県の青天の霹靂(へきれき)だ。21年産米概算金は東北の主要16銘柄で最上位の1万5000円台に設定された。

 山形県や農業関連団体などでつくるブランド化戦略推進本部は7月、22年産の生産量を決定。つや姫は約500トン増の約5万3500トンと強気に見積もった。「巣ごもり需要」で底堅い家庭用が大半で、業務用が多いはえぬきからの移行を念頭に置いたという。

 青天の霹靂は市場デビューが15年と後発ながら、食味ランキングでは特Aの常連。家庭用需要を取り込み、20年産の販売も堅調に推移するが、全農青森県本部は今年、概算金を定めるための「目安額」を初めて引き下げた。つや姫などライバルの末端価格の安値傾向を踏まえ、「青天の霹靂の価格が高いままだと需要が細ってしまう」(担当者)と気を引き締める。

 市場では22年、秋田県があきたこまちを超える大型銘柄化を志向する「サキホコレ」も参戦を予定する。弱肉強食のブランド米の戦いが一層熱を帯びる。

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