<東北・米価危機>(上)主要銘柄全てが前年下回る

店頭に並べられた宮城県産の新米ひとめぼれ。買い物客が次々と訪れた=9月23日、仙台市宮城野区のみやぎ生協幸町店

 東北の全農各県本部が農協に支払う2021年産米の概算金は、主要銘柄が大幅に下落した。大規模な作付け転換を図り、主食用米の生産を絞ったにもかかわらず、新型コロナウイルスの影響で業務用を中心に需要が低迷し、コメ余りに歯止めがかからない。出来秋を迎えた東北で、衝撃が広がる現場を追った。

下落額最大は「だて正夢」

 米価下落におののく生産現場とは対照的に、小売店は新米を求める買い物客でにぎわっていた。

 仙台市宮城野区のみやぎ生協幸町店で9月下旬、21年産の宮城県産ひとめぼれが売り出された。5キロの販売価格は1780円(税別)。前年同期比で100円安い。発売時の値下げは2年連続だ。

 2キロ(780円)を購入した青葉区の無職女性(78)は「おいしいお米を少しでも安い値段で購入できるのはありがたい」と歓迎した。

 概算金の水準は店頭価格、生産者の収入、出荷業者や卸売業者の相対取引価格など幅広く影響する。

 東北の主な銘柄の概算金(1等米、60キロ)は表の通り。16銘柄全てが前年を下回り、半数が1万円を割った。下落額が最も大きいのは、だて正夢(宮城)の4300円。他の多くの銘柄も2000~3000円台の減額を強いられた。

 全農青森県本部はまっしぐら、つがるロマンともに過去最大となる3400円の引き下げ。成田具洋米穀部長は「競合する関東のコシヒカリが8000円台で市場に流通し始めていた。各産地が大幅に落ち込むと予想し、青森も下げざるを得なかった」と説明する。

 岩手のひとめぼれは2300円減の1万円。県県産米戦略室の佐藤実県産米戦略監は「肥料や農薬にかかる費用も含めた生産費を考えると非常に厳しい」と指摘する。

自助努力に限界

 人口減や食生活の変化に伴い、主食用米の需要は年約10万トンペースで落ち込む。外食需要の減少を招いたコロナ下で2回目の作付けとなったコメ産地は、国の交付金に自治体独自の支援を上乗せし、主食用米から飼料用米などへの転作を強化した。

 東北6県の主食用米はいずれも前年比で減産となる見通しだが、相対取引価格は20年6月以降、前年割れで推移する。東北6県の民間在庫量(今年8月時点)は計約44万1900トンで、前年同期から約4万9000トン増えた。

 宮城県内の大規模農業法人は、ひとめぼれなどの水稲を約100ヘクタール栽培する。今年は飼料用米への転換を拡大したものの、概算金下落に伴う減収は約2000万円に達するという。

 「想定以上の下落に驚いている」と法人の幹部。「工場の設備投資計画を見直し、飼料用米は多収性品種の導入を検討する必要がある」と不安を抱えながら今後を見据える。

 数千トンもの20年産米を抱える東北の卸売業者も深いため息をつく。「在庫を長く持つほど価格は下がり、保管などの経費がかさむ。赤字を抑えるため、古米の製品を新米より安く売るなど対策を取るつもりだが、自助努力には限界がある」

 秋田県農協中央会の斉藤一志会長は「作付け転換に協力してもらった生産者を裏切ったような気持ちだ」と真情を吐露。「国は過剰米の市場隔離、政府備蓄米の柔軟な運用などで需給調整機能を発揮すべきだ」とさらなる対策を訴える。

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