<東北・米価危機>(下)輸出や消費拡大で活路模索

ジャパン・パックライス秋田の生産ライン。国内外の需要の取り込みを目指す=7月下旬、大潟村

 深刻な米価下落に直面する東北の農家らが、トンネルの中で光明を探る。

 7月下旬に本格稼働したばかりの秋田県大潟村のパックご飯工場で、衛生管理を徹底した従業員たちが精力的に仕事を進める。

パックご飯好調

 事業を担う「ジャパン・パックライス秋田」は県産米を中心にパック用に加工し、年間の製造能力は3600万食に上る。新型コロナウイルス下の巣ごもり需要を背景に滑り出しは好調で、将来的には年間生産量の3~5割を米国やアジアへ輸出する青写真を描く。

 国内ではライフスタイルや食生活の変化で、コメの需要や生産が縮小傾向にある。パックライス秋田の涌井徹会長は「従来の政策では産業として成り立たなくなっている。輸出による拡大生産にかじを切らなければならない」と見据える。

 2021年産の概算金が7年ぶりに1万円を割った宮城県の主力品種ひとめぼれ。業務用の引き合いが強く、誕生30周年をアピール材料に、県は3000万円の予算を投じた消費拡大緊急支援に乗り出す。

 支援例として、県内外の中食や外食の飲食店でひとめぼれのお代わりや増量を無料にする方法を想定。今後、公募型プロポーザルで事業の委託先を選び、22年1月中旬~2月中旬ごろに100店舗以上で100トン以上の消費を目指す。

 東京都内で9月29日開いた新CM発表会で、全農県本部運営委員会の高橋正会長も「おいしい宮城米を全国のより多くの消費者に届けていく」と力を込めた。

 米価下落による打撃は、コメ販売収入の多い大規模農家ほど大きい。

 主力のはえぬき、ブランド米の雪若丸の概算金が2年連続で下落した山形県は、概算金の支払いから収入減少影響緩和対策(ナラシ対策)交付までのつなぎ資金として500万円を上限に無利子融資を行う。岩手県は本年度、国の交付金に合わせて主食用米からの転換に10アール当たり5000円を上乗せ助成する独自事業を初めて実施した。

経営の柱に転作

 東北農政局が発表した東北の作柄概況(8月15日現在)は、全国唯一の「良」となった青森を筆頭に豊作基調。作況次第では余剰感が膨らむ可能性がある。

 減収が見込まれる農業者を支えようと、福島県は「農業経営収入保険」に新規加入する際の保険料を補助する関連費用約3800万円を、本年度一般会計補正予算に計上した。

 青森県南の農業法人はコメや大豆、野菜といった農作物を計約140ヘクタール栽培している。転作を経営の柱に据え、コメも作付面積約60ヘクタールのうち備蓄用が大半を占める。主食用は10ヘクタール程度にとどめているという。

 法人幹部が提起する。「国や自治体が価格の安定維持を図るのはありがたいが、個々の生産者や法人が自分の経営を見つめ直し、今後の方向性を考える必要性があるのではないか」

 東北大大学院の冬木勝仁教授(農業市場学)は「米価下落は、消費者が買い求めやすくなる点でプラスかもしれないが、生産者の所得が減り、安定供給の面では手放しで喜べる状態ではない」と説明。要望が高まる過剰米の市場隔離について「有効な対策の一つと思うが、コロナ下での時限措置。各産地での本格的な非主食用米への転換、需要に応じた生産の推進が求められる」と指摘する。

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