「ごみ屋敷」どうにかして 隣家の男性「条例制定を」

プラスチックや段ボールなど大量の「ごみ」が散らばった現場=9月中旬、静岡市駿河区

 「自宅の隣が『ごみ屋敷』で困っています」。読者の日常の困り事や疑問を取材、調査する静岡市の静岡新聞社「NEXT特捜隊」に、同市駿河区の飲食店経営朝岡俊司さん(58)から切実な訴えが届いた。

 早速現場を訪ねた。住宅街の一角に、道路標識を覆うほど樹木が生い茂る光景が目に飛び込んできた。敷地内はプラスチックや段ボールなどの「ごみ」が大量に散らばり、隣家の外壁にも密着して積み重なっていた。

店舗の壁にシロアリ、ヤブ蚊やネズミの被害も

 朝岡さんや近隣住民によると、敷地内の小屋には男性が1人で住んでいるとみられ、20年ほどこの状態が続いている。地元町内会も「ごみ」を片付けるよう説得しているが、男性は応じないという。

 朝岡さんは「店舗の壁にはシロアリの被害が出ている。ごみの撤去に応じてくれないため、修復工事もできない。ヤブ蚊やネズミの被害もある。土地の境界にあるブロック塀とフェンスは雑木に押されて傾き、倒壊を懸念している」と嘆く。

 男性に直接考えを尋ねた。「少しずつ片付けている。勝手に捨てられるのは嫌なので、誰にも手伝ってほしくない。ごみじゃない」と話す。

 「ごみ」は撤去できるのか。静岡市にごみ屋敷に特化した条例はない。居住者の男性に片付けを説得している市廃棄物対策課の担当者は「本人が処分の意思を示してくれれば、職員が手伝って片付けることはできる」と話す。生活のトラブルに詳しい佐藤治郎弁護士(同市葵区)は「たとえ隣家にごみが密着していても、敷地内にあるなら本人の許可なく処分することはできない」と話す。

 解決策はあるのか。佐藤弁護士は「シロアリ被害などは民事訴訟で損害賠償を請求することも可能だが、抜本的な解決は強制力に頼らざるを得ない面もあると思う。ごみ屋敷は全国的にも増えている。自治体は問題を抱える市民の声に耳を傾け、状況によっては条例制定も検討すべきだ」と指摘する。

 朝岡さんは男性と土地の所有者に「ごみ」の撤去や樹木の伐採などを求めて今夏、裁判所に民事調停を申し立てた。「男性の財産権は保護されるのに、実害を受けている自分の財産権がないがしろにされているのは理不尽。調停は金銭的な負担もある。やはり『ごみ屋敷条例』の制定が問題解決の一番の近道だと思う」と述べた。

先行自治体は「人」への支援に重点

 東京都足立区は全国の自治体に先駆け、いわゆる「ごみ屋敷条例」を2013年に施行し、これまでに800件以上の相談・苦情を解決してきた。足立区の担当者に聞いた。

 条例では、ごみ屋敷などの原因を作ってしまう人への支援を盛り込みつつ、廃棄物の放置などで周辺の生活環境に著しい障害を及ぼした場合、土地所有者らに対して命令や公表、代執行など厳しい措置を可能にしている。不良状態にある土地等への立ち入り調査をはじめ、戸籍や税の調査もできる。さらに、区の対応方針について第三者に意見を求めるため、医師や弁護士らでつくる審議会を設置。樹木の伐採やごみの片付けを支援した自治会などに対する謝礼金の制度もある。

 足立区生活環境保全課の志田野隆史課長は「強制的にごみを片付けるだけではいずれ再発してしまう。ごみをため込んでしまう人は何らかの問題を抱えている可能性があり、人への支援に重点を置いている」と条例の特色を語る。

 自治体に条例などがない場合、ごみ屋敷の対応は役所内の担当課が曖昧で、たらい回しになりがちという。足立区は担当を生活環境保全課に設定し、福祉や都市建設、環境など各部局が連携する対策会議や現場対応を協議するケース診断会議を実施している。

 志田野課長は「当事者との信頼関係の構築が最も難しい。時間はかかるが、原因者の抱える問題を一つ一つ解決することが重要」と話す。(静岡新聞提供)

東北では郡山、秋田両市が条例制定

 静岡市と同様、ごみ屋敷条例がない仙台市は各区役所で市民からの相談を受け付けている。市環境局の担当者は「ごみがたまった背景や現状を踏まえ、健康福祉局や消防局など関係部署と連携して対処する」(廃棄物企画課)と話す。

 シンクタンクの公益財団法人日本都市センター(東京)によると、東北では郡山市と秋田市がごみ屋敷条例を施行している。

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