「殿、簡単でござる!」 国恩記にルビ振り読みやすく

原文にルビが振られ、読みやすくなった国恩記
菅原政治郎さん

 江戸時代の宿場町吉岡宿(宮城県大和町吉岡)の町人有志が生活に困窮する住民を救った記録「国恩記」にルビを振った「ルビ振り国恩記」を、仙台市出身の郷土史愛好家菅原政治郎さん(73)=横浜市在住=が出版した。菅原さんは「児童でも読めるようにして後世に残したかった。宮城の人に広く原文に触れてもらいたい」と願う。

 町人9人が窮民救済を志して仙台藩に1000両を拠出し、年9・6%の利息相当額を救済に充てたいきさつをまとめた全6巻の原文に、菅原さんはルビを振った。351ページに上る労作だ。

 解題には「自治(じち)の意義(いぎ)に適(かな)ひたるものにして、今日(こんにち)に於(おい)て學(まなぶ)べき所(ところ)ある」と振り仮名を付けた。有志が家財衣類を売り払い田畑も手放す覚悟をして願いを果たした、と経緯を述べた序の部分は「種々(しゅじゅ)の艱難(かんなん)、漸功満(ようやくこうみち)て厳命新(げんめいあらた)に下(くだ)る。駅民(えきみん)これに潤(うるお)ふ」と読みやすくなっている。

 菅原さんはエンジニアを退職後、古文書解読に興味を抱いて古文書研究会に参加し、2013年に国恩記を知った。古里に伝わる先人の行動に心を打たれ、約1年、ルビ振りに取り組んだ。大和町の郷土史家、故吉田清孝さんに人名や地名などの添削を仰いだ。同町の故吉田勝吉さんが国恩記に関する文献を集めた「国恩記覚」を参考に、国恩記の簡潔な説明も付けた。

 14年からホームページで公開し、このほど350部を自費出版した。非売品で、県図書館と仙台市図書館をはじめ、全国の都道府県図書館と県庁所在地の図書館に寄贈した。

 菅原さんは「福祉の概念がなかった当時、庶民が自らの知恵で支配層の武士を動かし、地域共同体を存続させた素晴らしい行い。先人の苦労や謙虚さに思いをはせてほしい」と話す。

[国恩記] 大和町吉岡の龍泉院住職栄洲瑞芝(えいしゅう・ずいし)和尚が執筆。大正時代に出版された「仙台叢書(そうしょ)」に収録された。同書に記された史実が映画「殿、利息でござる!」の基になった。

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