津波で廃業のたこ焼き復活 南三陸の「タカミ」、移動販売で

 宮城県南三陸町で長年親しまれたたこ焼きが、移動販売で復活した。同町の弁当仕出し店「タカミ」の店主高橋三千代さん(80)が焼き上げていたが、東日本大震災の津波で店舗が流失、廃業していた。傘寿を迎えて8月、家族からの応援を受けて再起した。

 大きめのタコに、とろっとした食感。「変わらぬ味」「懐かしい」。オープンを聞きつけたなじみ客が次々と移動販売車に訪れる。

 「たこ焼きはどこにでもあるのに、うちの味を忘れずにいてくれた。おいしいと言われるとやっぱり気分がいい」と高橋さん。充実した日々が戻るとは、思いも寄らなかった。

元気にたこ焼きを販売する高橋さん(左)=9月30日、南三陸町志津川

息子たちに背中押され

 料理好きだった高橋さんは1987年、町中心部で弁当仕出し店を始めた。丹精込めた日替わり弁当を工場などに届ける一方、店ではたこ焼きや大判焼き、ソフトクリームなどさまざまな軽食を販売した。

 20年以上こつこつと積み上げた店の全てを津波に奪われた。自宅も全壊。年齢や資金を考えると、再建の気力はなかった。働き通しの人生に、ぽっかりと穴が開いた。

 仮設住宅から災害公営住宅に移ってもテレビを見て時間をつぶす日々。趣味の花を育てる庭もない。「一日過ごすのが大変だった」

 転機は高橋さんの性格や仕事ぶりを知る息子たちの一言だった。「お母さん、たこ焼きやったら?」。軽トラックの販売車両を準備し、店の手伝いも買って出てくれた。高台移転した街は様変わりしたが「子どもにも食べさせたい」と変わらぬ思い出の味を求める町民もいた。

 朝起きると感じる両脚のしびれは、調理場に立つと不思議と消える。「人のつながりを感じ、疲れも吹き飛ぶ。決断にみんなたまげているけど、何もしない方が病気になりそう」。高橋さんは楽しそうに笑った。

 移動販売「たこやきたかみ」は南三陸さんさん商店街向かいの上山八幡宮参道で出店し、木曜は町社会福祉協議会の支え合い拠点「結の里」に出向く。火曜定休。

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