<まちかどエッセー・津田公子>句を選ぶ

つだ・きみこさん 川柳作家。石巻市出身。日本大卒。元中学教諭(主に仙台市、石巻管内)。川柳宮城野社同人、県川柳連盟理事も務める。県芸術祭川柳部門文芸賞(県知事賞)を受賞。河北新報創刊100周年記念河北文学賞川柳部門佳作。句集に「風の中」。東松島市在住。

 ある川柳大会で年間賞の表彰式があった。受賞者代表はあいさつで「入選句の発表のある朝は血圧が上がります」と話し、参会者の笑いを誘った。それを聞けば作品を選ぶ選者の責任は重大だ。“圧”はどちらにもかかるようだ。

 所属している結社からかねて選者の担当依頼があった、課題川柳の作品が届いた。開封すると作品はパソコンで打たれていた。作者は無記名。作品の上に番号が付されている。1人2句の投句で、番号は250まであった。125人の参加である。作品が並ぶ3枚の用紙の黒い印字の塊が目に迫ってくる。投句者たちの熱量が伝わる。課題は「手帳」。今回はこの中から入選句35句(佳作27、五客5、三才3)を選ぶ。入選句は250句中35句。激戦となる。発表は10月号誌上。

 選はいつも緊張する。川柳は人間の心を詠むもの。課題の十分な吟味の後、作者の着眼点、独創性、表現力をまず念頭に置く。作品と向き合う時は真剣勝負だ。選者の川柳眼が試される。

 秋は川柳大会が各地でめじろ押しであったが、昨今はコロナ禍で誌上大会(入選の発表は誌上)が多くなっている。

 通常の大会は参加者が一堂に会し、複数の課題に出句し入選を競い合う。

 当日の選者室には十数人の選者が閉じこもり、1時間余りで300余句の句箋(作品を書いた無記名の短冊)をめくり、入選句を選出する。その後は披講(作品の読み上げ)のために選句を再読し、披講に備える。

 会場で入選句の発表が始まる。巧みな披講に応じ、入選者が呼名(こめい)(名乗り)する。この両者の呼吸が句の競演と鑑賞の場になる。一句ごとに称賛とどよめき。大会ならではの独特の雰囲気である。柳友との出会い、語らいも得られる。

 一方、大きな大会になるほど、入選は厳しいものになる。

 この夏もわが家の玄関脇に風鈴をつるした。つるす場所が風の通り道でないのか、原因はほかにもありそうだ。これは先年、富山市で開かれた全国大会の参加記念品なのだ。私はこの時、1句も入選しない、いわゆる全没であった。ほろ苦い思いが今もよぎる。
∧思い出が静止画像になっていく∨(川柳作家)

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まちかどエッセー

 仙台・宮城在住の執筆者が、それぞれの活動や暮らしで感じたことをつづります。


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