選挙ポスター貼りはつらいよ 掲示板640カ所、時に「邪魔」と怒鳴られ

<選挙に行こうZ!!>Z世代と考える低投票率(1)

 若者の低投票率が叫ばれて久しい。直近の国政選挙だった2019年参院選で宮城県内の18、19歳の投票率は36・49%、20~24歳は30・79%(抽出調査)にとどまり、およそ3人に1人しか投票に行かなかったことになる。20歳前後のいわゆる「Z世代」の有志4人によるチーム「選挙に行こうZ!!」と衆院選、宮城県知事選(ともに31日投開票)のさまざまな現場に潜入し、低投票率の理由や改善のヒントを探る。
(編集局コンテンツセンター)

陣営スタッフによるポスター貼りの作業を見守る尾形さん(奥)=19日午前10時5分ごろ、仙台市青葉区

 衆院選がいよいよ公示された19日。「選挙に行こうZ!!」メンバーの尾形愛々子(りりこ)さん(18)=尚絅学院大1年=と、宮城1区のある陣営のポスター貼りに同行した。

 朝9時、男女スタッフ2人と向かった先は仙台市青葉区北部の住宅街。男性スタッフの運転で急坂やすれ違いが難しい狭い道を縫うように走ると、目指すポスター掲示板があった。

 掲示板を見つけると女性スタッフが下車し、小走りで駆け寄った。ポスターとはいえ紙ではなく、プラスチックフィルムの裏にのりが付いたステッカーのようになっている。「くれぐれも候補者の顔にしわが入らないように」。裏紙を剥がし、ゆがみや気泡に注意しながら位置を微修正する。

 この間、約2分。車を止めやすい場所に移動していた男性スタッフが頃合いを見計らって戻り、女性スタッフを乗せて次の掲示板を探す。「有権者に不愉快な思いはさせられない。それでも『邪魔だ』と怒鳴られることもあるが…」

届け出順が決まってからが「勝負」

 青葉区の全域と、秋保地区以外の太白区からなる宮城1区。広さ約390平方キロの選挙区内に掲示板は641カ所ある。掲示スペースの番号は公示日の朝8時すぎ、立候補を届け出た順に決まる。そこからが各陣営の「勝負」だ。

 2人のスタッフが受け持つのはこのうち23カ所。市選管から借りた資料を基に陣営が作った地図だけが頼りだ。「初めての人はなおさら時間がかかる」。学校や公園、商業施設など設置場所は分かっても外周のどこにあるか、選挙を10回以上手伝ってきた男性でさえ迷う。

 「スペースが上の位置だと貼るのが大変そう」。作業を見守っていた尾形さんの率直な感想に、男性スタッフは「これでも国政選挙はましな方」と明かした。

 青葉区の場合、定数1の今回は上下2段、横4行の計8人分だが、県議選(定数7)や市議選(同15)では上下3段になる。最上段は高さが地上2メートル近くにもなり、脚立なしでは作業にならないという。

 23カ所を全て貼り終えたのは午前11時前。「ほぼ休みなしでスムーズに作業を進めたのに、それでもこんなに時間がかかるものなんですね…」と尾形さん。ちなみにスタッフ2人が担当した23カ所は全体のわずか4%弱。

 移動に使ったのは男性スタッフの私有車で、ガソリン代は自腹。公選法は一部の仕事を除き、選挙運動に報酬を支払うことを禁じている。この陣営は1区内選出の県議、市議やその支援者に手伝ってもらい、公示日当日にポスター貼りを全て終えた。

尾形さん「分かりやすい地図を作り、配っては?」

 「これまで、ポスターは市町村の選管や業者の人が全員分をまとめて貼り出していると思っていた。これほど多くの人たちが選挙に関わっているとは想像もできず、驚いた。スタッフの方は大変そうなのに明るく作業に取り組んでいて、候補者を心から応援しているのだと感じた。

 掲示板はかなり入り組んだ場所にも設置されているのに、地図は選管から借りた1冊を見て、陣営が手作りしたものしかなかった。地域のことをよく知る人でないと、ポスターを貼ることすら難しそうだ。選管は分かりやすい地図を作り、配ってほしい。

 今までは、あまりポスターの内容を気にしたことがなかった。ちゃんと見ると候補者ごとに色使いが違うし、キャッチフレーズなども記してある。これからは素通りせず、見てみよう」
(尚絅学院大1年・尾形愛々子)

[Z世代]インターネットが普及した1990年代中盤以降に生まれた20歳前後の若者世代を指す。米国の世代区分で「X世代」「Y世代」に次ぐことなどに由来。スマートフォンや短編動画アプリ「TikTok(ティックトック)」や交流サイト(SNS)を上手に使いこなし、社会とのつながりが強い。環境など社会問題への関心、政治意識も高いとされる。女子テニスの大坂なおみさん(24)がアイコン的存在。リーマン・ショック後に育ったことから堅実な生き方を志向するとの分析もある。

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