(110)戦争がはじまる野菊たちの前/矢島 渚男(1935年~)

 一句の中に戦争と野菊が対置されている。破壊の極みと可憐(かれん)で儚(はかな)いもの。太平洋戦争開戦当時幼かった作者、「野菊たち」は野の花を摘む少年少女たちを想起させる。その歴史認識は、このままでは「戦争がはじまる」と現在形で断言する。反戦歌「花はどこへ行った」を思う。花は娘に摘まれ、娘は結婚し、夫は戦場へ行き、そして死んで墓に、墓は花で覆われ、再び花は娘に摘まれる。句も歌も「人はいつになったら悟るのか」と投げ掛けてくる。句集『延年』より。(永瀬十悟)

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秀句の泉

 「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。


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