(111)外套の肩をすべりし独り言/野城 知里(2002年~)

 この句には俳句らしい仕掛けがある。一つは「の」の主格の用法(連体修飾格ではない)、もう一つは動詞の連体形のあとに普通はつながらない名詞を持ってきて、動詞のあとに意味上の断絶を設ける、つまり「切れ」である。だから、肩を滑り落ちたのは外套(がいとう)であって独り言ではない。そして、外套がずれる感覚の中に、口から滑り出る独り言の本質を巧みにとらえている。叙法の妙ということである。作者は当時、埼玉・星野高の高校生。「俳句四季」2021年2月号より。(浅川芳直)

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秀句の泉

 「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。


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