<手腕点検>東松島市・渥美巌市長 独自色強い施策実現 対話型の市政望む声も

 東日本大震災から10年がたった今年、地方自治の現場は新型コロナウイルス感染症との闘いに引き続き追われた。少子高齢化や人口減少、地域経済の疲弊も深刻化。難局のかじ取りを担う宮城県の市町村長は地域の負託に応えているか。住民や関係者の声を交えて検証する。

矢本海浜緑地公園であった県への予算要望会で設備追加を求める渥美市長=7月14日、東松島市

 「市民が安心して生活できるよう、ぜひ予算措置をお願いしたい」

 東松島市の災害復旧工事現場で7月にあった土木事業に関する県への要望会。マイクを手にした渥美巌市長(74)が県幹部らに訴えた。県道交差点の改良や堤防工事といった課題を抱える現場をバスで回る方式は1996年から続く。発案したのは当時県議だった渥美氏だ。

 土木、農林水産の両分野で年1回ずつ開催。東日本大震災の復興事業でも予算確保に成果を上げた。渥美氏は「予算を求めるなら現状を見てもらうのが最も効果的だ」と話す。

 旧矢本町職員、町議会事務局長を経て95年から県議を6期連続務めた。前市長の後継として2017年の市長選で初当選。国や県とのパイプを生かしたまちづくりを進め、今年4月に無投票で2期目を迎えた。

 「一番とか初めてが好き」と公言する通り、市の施策は独自色が強い。18年に国連の持続可能な開発目標の推進自治体「SDGs未来都市」に県内で初めて選ばれた。20年には人口減少対策として石巻地方で初の私立高「日本ウェルネス宮城高」誘致を実現した。

 16年度から10年間に及ぶ第2次総合計画の後期基本計画の策定作業は幹部の意見も踏まえて外部に委託せず、職員だけで素案を手掛けた。結婚祝い金支給事業といった職員提案の施策も積極的に取り入れる。

 新型コロナウイルス対策では3月、PCR検査を受け持つ医療機関に1件当たり2000円の協力金を支給。ワクチン接種でも先手先手の対応を打つ。加藤慶太副市長は「公立病院がない中、平時から市長と医師会や薬剤師会が良好な関係を築けていたことが奏功した」とみる。

 一方で「発想が先行するあまりトップダウンの強引な手法に陥りがち」との指摘も出ている。元議長の現職市議は「議員からの意に反する提案には紋切り型の答弁で、やると決めたことは無理に押し切るところがある」と語る。

 9月の市議会定例会では旧鳴瀬桜華小校舎を活用した移住・定住を促進する宿泊施設の整備費1億7000万円を含む一般会計補正予算案を巡って紛糾した。

 旧鳴瀬町が国の過疎地域に選定されており、市は整備費を過疎債で賄う算段だったが、議会で必要な手続きを経ておらず「一方的な提案だ」と半数以上の議員が反発。予算案は可決されたが、本来必要だった過疎関連の計画提出を求める付帯決議が付いた。

 県議時代からの派閥主義の考えが強く、市政与党をつくって議案を通そうとする姿勢が目立つ。別の市議は「議会と手を携えて市民の困り事を解決するのが首長。議員と是々非々で向き合ってほしい」と言う。

 市民の声を吸い上げ、自身のアイデアをどう生かすか。対話型の市政を望む声は多い。
(石巻総局・大芳賀陽子)

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