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「記憶の素描」(2)空白の冬の色-石沢麻依(芥川賞作家)

 小さな灰色雲が屋根の煙突から細く伸びる頃、秋が熟してくる。秋の気配を感じるのは、空気に煙の匂いが混ざってくるこんな時だ。森や街路樹が乾いた黄褐色に染まり、陽射(ひざ)しで金色に燃え上がる「黄金の秋」という言い回しがドイツにはあるが、実際は冷たい雨模様か曇り、霧の灰色の方がなじみ深い。そのために、秋…

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記憶の素描

 仙台市出身の芥川賞作家石沢麻依さんのエッセーです。ドイツでの生活で目にした風景や習慣の妙、芸術と歴史に触発された思い、そして慣れ親しんだ本や仙台の記憶を、色彩豊かにつづります。

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