消防団報酬 多数の団員抱える地方、引き上げに二の足

 総務省消防庁が全国の市町村に求めている2022年4月からの消防団員の報酬引き上げを巡り、人口規模に対し団員数の多い地方の自治体ほど増額に難色を示す傾向があることが分かった。都市部に比べ財政基盤が弱く、低い報酬が続いてきたため、支出額の急増に耐えられないことが背景にある。対応次第では全国の自治体間で処遇の不公平感が増す恐れもある。

署員不足カバーへ超過採用 負担急増耐えられず

 都道府県別の人口10万当たりの団員数は表の通り。佐賀県が2242人と全国最多で、山形2215人、熊本1784人と九州や東北の県が続く。下位は沖縄が全国最少で116人。大阪117人、東京160人などと都市部の自治体が目立つ。都道府県間の格差は最大19・3倍ある。

 人口10万当たり団員数が多い県ほど、平均年額報酬を低く抑える傾向もある。団員数が多い自治体は報酬額が30~40位台に沈む一方、下位層の報酬はいずれも上位を占める。団員数4位の山梨は報酬額が1万3333円で全国最低、逆に団員数45位の東京は6万1549円と全国最高、実に4・6倍の差があった。

 財政基盤が強く、消防の常勤体制が充実した都市部は少数の団員を好条件で処遇できる一方、地方は低報酬で多くの団員を確保し正規の消防職員不足を補ってきた実態がうかがえる。

 消防庁は4月、普通交付税の算定単価に合わせ、全国の市町村に22年4月から年額報酬を3万6500円以上とするよう通知した。しかし、交付税算定上の団員数は人口10万当たり583人。地方の実情とは著しく乖離(かいり)している。

 算定額より低額の報酬で団員を超過採用してきた地方では財政負担が急増することになる。消防庁は報酬増に対応する地方財政措置を示しておらず、多くの地方の市町村が増額に二の足を踏んでいる。

 人口10万当たり団員数1位の佐賀県では現時点で、消防庁の通知に沿って22年4月に3万6500円に引き上げるのは全20市町のうち玄海町だけ。同町は団員定数を削減するという。

 2位の山形県では、白鷹町だけが今年4月に3万6500円に増額したものの、残り34市町村に追随する動きはない。

 22年4月からの増額を見送った鶴岡市の担当者は「交付税算定上の団員数に比べ実態は5倍も多い。市町村合併により市域が広がった。報酬を上げるため団員定数を減らすのは本末転倒だ」と指摘する。

 河北新報社は「読者とともに 特別報道室」に寄せられた情報を基に昨年6月以降、消防団の運営を巡る問題を取り上げている。
(菊間深哉)

早期の増額は困難か 国は財政措置示さず     

 全国の市町村の消防団員の報酬引き上げを担保する地方財政措置について、総務省消防庁は「早急に示したい」との考えだ。ただ自治体の2022年度予算編成作業は終盤に入っており、消防庁の目指す22年4月からの報酬増額は日程的に難しい可能性がある。

 消防庁地域防災室によると、地方財政措置を明示するよう求める声は各自治体から多く寄せられている。報酬引き上げについて「財政当局は理解しており、ゼロ回答はない。地方側にどの時期に、どこまで示すか調整中」と説明する。

 報酬引き上げに消極的な市町村は、普通交付税算定上の団員数を超過し財源が不足している点を強調する。しかし、算定上の団員数の2倍以上いる市町村には、交付税措置額を超える額の半分が上限なしで、特別交付税として配分されている。

 消防庁の担当者は「極端に団員が多い自治体には既に手当てしている。市町村が22年4月から増額できるようにしたいが、まだ財政措置の結論が出ていない」と述べる。

河北新報のメルマガ登録はこちら

企画特集

先頭に戻る