社説(12/31):老老介護 深まる孤立/閉ざされた心に添う支援を

 お年寄りがお年寄りの生活をケアする「老老介護」の行き詰まりに端を発した、痛ましい事件が相次いだ1年だった。介護を社会全体で支えることを目的とした介護保険制度の導入から20年以上が経過する中で、苦しみから抜け出せない高齢者世帯が増えている。公的サポートの在り方を見詰め直す必要がある。

 1月に仙台市宮城野区の市営住宅で同居する夫を刺殺したとして妻が、3月には東京都北区の団地で寝たきりだった姉を窒息死させたとして妹がそれぞれ殺人の疑いで逮捕された。関係する4人はいずれも80代。亡くなった2人は認知機能の低下や寝たきりの状態にあり、ともに介護疲れが引き金となった。

 今月上旬にあった仙台地裁、東京地裁の判決では、命を奪った罪の重さを指摘した上で、「周囲に協力を求めなかったことは取り立てて非難できない」「苦しく絶望的な状況下での犯行で心境については同情できる」とし、いずれも執行猶予付きの判決が言い渡された。

 厚生労働省の国民生活基礎調査によると、2019年、65歳以上の高齢者のみの世帯は全体の28・7%。同居者がいる75歳以上の介護が必要な人のうち、介護する人も75歳以上のケースは33・1%に上り、01年(18・7%)に比べて倍近くに増えた。夫婦ともに要介護者という世帯も珍しくなくなっている。

 2000年4月にスタートした介護保険制度では、家族が無償で担うものとされてきた「介護の社会化」が大きな目的だった。ただ現行の制度は老老介護が拡大している現実に即しているとは言い難い。家事援助などのサービスは原則、同居の家族などがいる場合は利用できない。

 一方、サービスを受けられる「要支援」や「介護」の認定を受けていても、当事者が「自分で何とかする」「他人に迷惑は掛けられない」と支援を求めることを拒み、活用が十分にされていない実態も浮かび上がっている。

 仙台、東京のケースとも一人で重い介護負担と将来への不安を抱え込んだ果てに、悲劇は起きた。それぞれケアマネジャーが訪問介護の利用や特別養護老人ホームへの入所を勧めたが、断られた経過もあったとされた。

 サービス提供や第三者の介入だけでは解決できない複雑な事情に対し、介護者の視点に立って閉ざされた心をどうケアしていくか。現場で今、何ができるのか。事件を踏まえ、難しい答えを探すきっかけにしなければならない。

 高齢化の進行に加え、長引く新型コロナウイルスの影響で外出自粛や対面による関わりの機会が減り、孤立する人々の増加も懸念される。家族の介護や世話を担う18歳未満の子ども「ヤングケアラー」の問題を含め、多様な支えの手を差し伸べられる社会の仕組みづくりを模索したい。

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