<とびらを開く>シジュウカラガン守る 「日本雁を保護する会」 越冬地保全で再飛来

舞い降りるシジュウカラガンの群れ=2014年1月、大崎市古川(池内俊雄さん提供)

 小鳥のシジュウカラに似た白い頬が特徴的な渡り鳥シジュウカラガン。まるでほっかむりをしているようにも見えることから、仙台平野では昔、方言を交え「ホッカブリガン」などとも呼ばれたそうです。その群れが昨年1月、86年ぶりに仙台市宮城野区福田町と多賀城市に飛来しました。「七北田川下流域の七北田低地(福田町・多賀城市周辺)はかつて、シジュウカラガンの越冬地だった。いわば『古里』にようやく帰ってきてくれた」と感慨深げに話すのは、環境保全団体「日本雁(がん)を保護する会」(栗原市)会長の呉地正行さんです。

 保護する会は1970年の設立以来、ガン類の保護とその生息地の保全活動に取り組んできました。シジュウカラガンについては米国、ロシアと共同で回復計画が進められ、絶滅寸前の状況から昨年時点で日本への飛来数が9000羽を超えるまでに回復しました。

 激減したそもそもの原因は、20世紀初頭の世界的な毛皮ブームでした。シジュウカラガンは繁殖地の千島列島で、毛皮目的で放されたキツネの餌食になってしまったのです。日本でも、ガン類の安全なねぐらとなる浅い湖沼と採食のための広い水田が開発などで徐々に姿を消し、飛来地自体も減少していきました。

 日本最大のガン類の越冬地は宮城県の伊豆沼・蕪栗沼周辺ですが、一極集中は伝染病まん延のリスクも伴い、飛来地の分散化が課題となっています。保護する会は農家の協力の下、冬も田に水を張る「ふゆみずたんぼ」を普及。農家にもさまざまなメリットがあり、飛来地の創出を図りながら農業との共生を目指しています。

 多賀城市には塩釜市、宮城県利府町にまたがる加瀬沼があり、1935年ごろまではシジュウカラガンが多数見られ、再飛来の可能性を秘めています。団体、企業、行政といったセクター間を越えたつながりも生まれており、環境コンサルタント会社の東北緑化環境保全(仙台市)の香川裕之さんは「シジュウカラガンをきっかけに、住民の環境への関心が高まる取り組みをしていきたい」と意欲的です。

 「飛来は、シジュウカラガンに選ばれた自然豊かな土地の証拠で、誇れること」と呉地さん。昔は当たり前だった「ホッカブリガン」と人との共生は、最終的には私たち住民一人一人の意識にかかっているのではないでしょうか。(NPO法人せんだい・みやぎNPOセンター 鶴巻さやか)

 「日本雁を保護する会」は昨年、設立50周年を記念し『シジュウカラガン物語 しあわせを運ぶ渡り鳥、日本の空にふたたび!』=写真下=を出版しました。絶滅の危機から復活までの道のりが詳細につづられています。(京都通信社・2970円)

◎参考情報
日本雁を保護する会
連絡先 0228(32)2004、電子メールgan.g.kurechi@gmail.com
活動概要 シジュウカラガン回復計画の歩みを昨年1月開催の「希少ガンのシンポジウム」講演動画で紹介している。動画投稿サイト「ユーチューブ」で閲覧できる

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