河北抄(1/22):山田洋次監督の映画『男はつらいよ』シリー…

 山田洋次監督の映画『男はつらいよ』シリーズには、心に響くせりふがたくさんある。渥美清さんが演じる寅さんの言葉は、時に哲学的でさえある。

 第39作『寅次郎物語』で、おいの満男が寅さんに尋ねる。「人間は何のために生きてんのかな?」。寅さんはしばらく考えた後、こう言う。「ほら、ああ、生まれてきてよかったなって思うことが何遍かあるじゃない。そのために人間生きてんじゃねえのか」

 大阪のビル放火殺人をはじめ、無差別に人の命を奪ったり奪おうとしたりする陰惨な事件が後を立たない。真相は未解明だが、背景には、容疑者たちの孤独や孤立があるようにも思われる。彼らも生まれてきてよかったと思ったことは何度もあったはずだろうに…。心の闇は、暗くて深い。

 身近に寅さんのような存在がいたら、犯行は防げたのではないか。そんな思いが拭えない。一方で、孤独や孤立に耐えきれず、同じような事件を起こし得る人はいるはずだ。心の闇は、今の社会が抱える闇でもあるのではないか。

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