目指せ宮城唯一の介助犬 見習い「オン」特訓中 車いすをけん引、物拾う…

訓練のため、地下鉄に乗って移動するオンと我妻さん=19日、仙台市青葉区

 宮城県内唯一の介助犬の認定を目指し、ラブラドルレトリバーのオン(雄、2歳)が、ユーザーとなる仙台市青葉区の我妻進之(のぶゆき)さん(50)と市内で特訓中だ。介助犬は車いすをけん引したり、落とした物を拾ったりして身体障害者の日常生活をサポートする。社会参加の相棒となる心強い存在だが、認知度は低い。我妻さんは「介助犬と過ごして世界が広がった。関心を持つ人が増えてほしい」と願う。

身体障害者の生活サポート 「優しい目で見守って」

 「ヒール(左に)」

 「テイク(くわえて)」

 「シット(座って)」

 19日、青葉区の市地下鉄仙台駅。車いすの我妻さんの指示を受け、寄り添うオンは改札を通り、エレベーターでホームに降り、難なく乗車した。

 この日は南北線の仙台-北四番丁間を往復する訓練だった。乗車証を落として「テイク」「ギブ(渡して)」と指示すると、オンはくわえて持ってきた。「グッド(よくできたね)」。我妻さんは褒め、餌をあげた。

 「行きは緊張が伝わってきたけど、帰りは落ち着いていた」と我妻さん。「オンはおっとりした性格。気分の乗せ方を探っているところだね」と笑った。

 我妻さんとオンは昨年12月、日本介助犬協会の愛知県内にある施設で10日間の合同訓練に臨んだ。仙台に戻ってからも今月4日から1カ月間、我妻さんが通う太白区の就労支援事業所周辺のほか、許可を得て駅や商業施設で実践的なトレーニングを積む。2月の認定審査をクリアすれば介助犬となり、我妻さんに無償で貸与される。

 札幌市で警備会社を経営していた我妻さんは、椎間板ヘルニアの悪化などで2015年に車いす生活となり、17年から1頭目の介助犬グレープ(雄、7歳)と過ごした。大学時代と会社員生活を送った仙台に翌年転居してからも、朝起きてから夜寝るまで一緒。トップレベルのパラカヌー選手でもある我妻さんと全国各地に遠征した。

 我妻さんが「行動の幅が広がり、出会う人も増えた」と感謝するグレープは、脚の不調で介助犬を昨年秋に引退。オンが後を継ぐことになった。

 協会のトレーナー遠藤大輔さん(41)は、グレープの認定時から関わり、今回も仙台市に滞在して支援する。「犬に我慢をさせるのではなく、動作を自ら選んでもらえるような関係を築くのが大事。互いに幸せでなければ意味がない」と説明する。

 02年施行の身体障害者補助犬法は、公共施設や不特定多数が利用する民間施設に介助犬同伴の受け入れを義務付けている。ユーザーは衛生管理を徹底し、犬も施設内で静かに待機するが、理解不足から店舗などが同伴を拒むケースも多いという。

 「見掛けたら、優しい目で見守ってほしい」と我妻さん。遠藤さんは「介助犬は障害者が1人で出掛けるのを後押しし、自信を与えてくれる。車いすも介助犬も安心して移動できる社会になればうれしい」と認知度の向上に努める考えだ。

[介助犬]盲導犬、聴導犬とともに身体障害者補助犬法に定められ、「落ちた物を拾う」「指示した物を持ってくる」「ドアを開閉する」などニーズに応じた動作で肢体不自由者を補助する。

 厚生労働省によると、盲導犬が全国に861頭いるのに対し、介助犬は57頭(2021年10月時点)にとどまる。東北では岩手県に3頭、秋田県に1頭しかいない。

 厚労省が指定する全国の24法人(21年8月時点)が訓練を担い、7法人(同)が認可する。多くの法人は企業団体の寄付や自治体の補助金で運営している。

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