河北春秋(1/26):ウイルスは恐ろしい。新型コロナウイルス感…

 ウイルスは恐ろしい。新型コロナウイルス感染症の流行で、多くの人がそんな印象を持っているに違いない。けれども、ウイルスは使えるのだという。特性を利用したがん治療が始まっている▼東京大医科学研究所教授の藤堂具紀さんが昨年末に出版した『がん治療革命』。同書によると、ウイルスにがん細胞を攻撃させ、細胞を死滅させる治療法だ。ある種の脳腫瘍の患者に試してみて、効果がすでに確認されている▼ウイルスががんを小さくする現象は昔から知られていた。しかし、ウイルスが強いと病気を引き起こし、弱ければがん細胞を十分には殺さない。ウイルスの病原性の強さをどう調節するか。藤堂さんらは遺伝子操作でそれを可能にした▼がん細胞の中だけで増殖し、正常細胞では増えない性質のウイルス。多くの人が一度は感染している身近なヘルペスウイルスを改変してそれを作った。藤堂さんは「強い副作用や後遺症が出る心配がないのが特色」と書いていた▼今のところ、治療が困難な一部の脳腫瘍だけが対象だが、東大医科研のサイトには「全ての固形がんに同じメカニズムで作用する」とある。他のがんへの適用もそう遠くはないはず。大学発の画期的な治療法だ。国の強力な後押しと製薬会社の協力がこれから急がれる。(2022・1・26)

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