副反応への懸念、接種に迷い 子宮頸がんワクチン対象者・保護者に聞いた

 国は2022年度、副反応報告が相次いだため中止していた子宮頸(けい)がんワクチンの積極的な接種の呼び掛けを、約9年ぶりに再開する。河北新報社が接種対象となる女性と保護者らにアンケートをしたところ、副反応への懸念から、接種に消極的な姿勢が目立った。ワクチンの効果とリスクをどう考えればいいのか、関係者に聞いた。(生活文化部・越中谷郁子)

保護者の8割が接種に消極的

 アンケートは昨年12月21~26日に無料通信アプリLINE(ライン)で行った。有効回答数は114。内訳は、接種対象となる未接種の女性5、接種対象者の保護者および今後対象となる女子の保護者77、接種済みの女性8、接種済みの人の保護者24。

 未接種女性の保護者77人のうち、41・6%が「受けさせない」と答え、「様子を見る・分からない」と合わせ、8割近くが接種に消極的だった(グラフ)。理由(複数回答)は「副反応が心配」(86・7%)が最多で、「将来的な影響など分からないことが多い」(70%)「有効性に疑問がある」(40%)と続いた。

 「受けさせる」と答えた人は「医師が訴える必要性を理解した」「がんを防げる」などを挙げた。

 接種対象となる5人のうち「接種したい」と答えたのは3人。19歳の学生は「母が子宮頸がんになった。リスクを減らしたい」とした。

 接種済みの女性と保護者計32人に副反応の有無を問うと、69%が「なかった」と回答。「あった」人の症状は、頭痛、倦怠感、接種部位の痛みなどだった。

 「接種して良かった」と答えた人は62%で「リスクに比べ、はるかに効果が大きい」「がんになる不安が消えた」との声があった。残りは「どちらとも言えない」と回答。理由に「今も副反応が出ないか心配」など、接種から時間がたっても副反応への不安が消えない様子がうかがえた。

 ワクチンの概要は表の通り。国は、慢性疲労や全身の痛みなど接種後に生じた症状とワクチンの関連性は明らかになっておらず、安全性について特段の懸念は認められないとする。国内外の研究でワクチンの有効性を示す結果が集まったとして、昨年11月、接種の積極的勧奨再開を決めた。

スウェーデンでは発症率大幅減

 早期再開を求めてきた日本産婦人科医会がん対策委員会委員長で仙台産婦人科医会の小沢信義会長は、科学的根拠の一つとして「スウェーデンで06年から11年間、国内の女性167万人を追跡調査した結果、17歳未満で接種した場合の発症率が88%減少した」と説明する。

 自身が14、15年に宮城県内の約6000人を調査したところ、接種者の発症率は未接種の人と比べて85・5%少なく、「予防効果は明らかだ」と強調する。

 世界の中でも接種が進むオーストラリアでは、28年に子宮頸がんを撲滅できるといわれている。「日本は無策のまま8年以上も経過し、ワクチンの存在すら知らない若者が増えた」と嘆く。

 仙台市は20年11月から、対象者にワクチンのパンフレットを郵送している。15~18年度、20~60回で推移していた接種回数は、20年度に約1800回に増えた。小沢会長は「新型コロナウイルスと同様、ワクチンの接種率向上が急務だ。学校教育の中で、男女問わず子宮頸がんとワクチンへの理解を深めることが近道となる」と話す。

信頼回復、丁寧な説明が鍵

 一方で、接種後、多様な症状に今も苦しむ女性たちがいる。

 「全身の痛みや倦怠(けんたい)感が続き、保育士になる夢を諦めざるを得なかった。新たな被害者を出さないで」。中学3年の時に接種した北九州市の女性(23)は昨年12月、接種に慎重な姿勢を取る「新日本医師協会」(東京)が開いたHPVワクチン検討会で訴えた。

 副反応被害を訴え、130人が国と製薬会社に損害賠償を求める裁判も継続中だ。原告ら被害を訴える女性たちの救済を求める全国被害者連絡会(会員約600人)の山田真美子副代表=横浜市=は「ワクチンは改良されていない。具体的な治療法も確立されていない。この状況で接種者が増えれば、明らかに被害者が増える」と危機感を抱く。

 「国は協力医療機関を指定し、接種後に症状が出た人に寄り添った支援をしているというが、受診して詐病、精神的なものと言われた人がいる」と山田副代表。訴えを真剣に受け止める医療者がいるのかと疑問視する。

 接種するかどうかは、最終的には個人の判断に委ねられる。

 公衆衛生医でリスクコミュニケーションに詳しい、福島県立医大総合科学教育研究センターの後藤あや教授は「一度失われたワクチンへの信頼を回復するには、時間がかかる」と指摘。「接種対象者が、効果とリスクを理解し、納得して決断できるようにするには、医療や行政の関係者、政治家など周囲の大人が、科学的な根拠を易しい言葉で分かりやすく伝えることが大事。ワクチン接種が進むかどうか、今が正念場だ」と語る。

[子宮頸がんワクチン]発症の原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を防ぐ。2013年4月に定期接種化されたが、接種後に全身の痛みやしびれなどを訴える人が相次ぎ、国は2カ月後に接種勧奨を中止。7割を超えた接種率は、1%未満になった。毎年、子宮頸がんを発症する人は約1万1000人おり、約2800人が亡くなっている。

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