広がる「介護脱毛」 ケアする人に配慮、老後の備え

 自分が介護される立場になった際、介護者の負担を軽くしようと、あらかじめアンダーヘアを処理する「介護脱毛」に踏み切る人が増えている。希望者は40、50代の女性が多く、徐々に男性にも広がっているという。
(生活文化部・矢嶋哲也)

サロンで脱毛に使う機器を手にする浅井さん

排せつ物処理で苦労

 「介護脱毛」という言葉は2017年、医療脱毛専門院のリゼクリニック(東京)が初めて使った。仙台市青葉区など全国に分院がある同院がインターネットでアンケートをしたところ、40、50代の女性の7割以上が将来介護されることを意識し、5人に1人が「汚い」と思われたくないため介護脱毛を希望しているとの結果が出たという。

 新宿院の大地まさ代院長は「もともとは親の介護を経験し、『介護者の手を少しでも煩わせないように』と行う人が主だった。最近は認知度が上がり、介護経験者でなくても老後に備えて脱毛する女性が増えている」と説明する。

 昨年7月のアンケートでは、介護脱毛を知っている男性は前年の4・5%から12・7%に増えた。また31・1%の男性が介護脱毛を希望するなど、男性の認知度も着実に上がっている。

 同院は、介護脱毛のメリットとして(1)陰部の炎症や感染症予防(2)おむつ交換の際の臭い軽減(3)介護者の負担軽減-を挙げる。

 施術は医師の監督・指示の下で行われ、看護師が医療用レーザー脱毛器を使って1回約30分照射する。照射は初め8週間間隔、毛が薄くなってくると12週空けて行い、5回ほどで満足する人が多いという。料金は、アンダーヘアの脱毛セット5回コースで9万9800円。

 大地院長は「脱毛に適齢期はないが、医療レーザー脱毛は白い毛には反応せず、脱毛効果はない。施術するなら白い毛が増える前を勧める」と言う。ただし、肌の色が黒く日焼けした人や、妊娠・授乳中の女性、予防接種の前後2週間などは脱毛できない場合がある。

 宮城野区で脱毛・ネイルサロン「C.color(シーカラー)」を営む浅井千夏さん(44)は、看護師として働いた経験などから、介護脱毛を積極的に勧めている。

 浅井さんは、高齢者らが入院する病棟で働いた際、排せつ物の処理などで苦労したという。「乾燥して毛にこびり付くと、患者さんが痛くないようにきれいに落とすのが大変。職業柄、清潔を心掛けなければいけないが、お世話をした後に手を洗うのも時間がかかった」と振り返る。

施設対応に差はなし

 19年9月のサロン開業以来、約100人が介護脱毛を選択した。浅井さんは「看護師仲間に賛同してくれる人が多いのがうれしい。ただ、『(介護されるような)年じゃない』という人も少なくない。まだ認知度は低い」と話す。

 サロンでは光脱毛を行っている。1回の施術にかかる時間は1時間弱。電気シェーバーで毛を短くし、ジェルを塗った後、脱毛する部位に機械で光を当てていく。料金は1回9900円。月1回程度の施術を続けると、1、2年でほぼ毛が気にならなくなるという。

 医療機関での脱毛に比べて時間はかかるが、痛みが少ないと浅井さん。「ホルモンバランスの変化などで絶対に生えてこないとは言えない。恥ずかしいと感じる人もいると思うが、施術はなるべく露出部分を少なくし、体勢にも気を使って行うよう心掛けている」と話す。

 介護脱毛するか、しないかは、個人の判断にゆだねられている。宮城県内で20年以上にわたり高齢者福祉施設を運営する女性は「アンダーヘアの有無で施設での対応に差が出ることは考えられない」と強調している。

若者の脱毛、高額契約トラブルも

 仙台市消費生活センターによると、介護脱毛に関する相談は寄せられていないものの、若者を中心に脱毛の契約などに関するトラブルが目立っているという。昨年4~11月には26件の相談があった。6割が20代からで、同センターは「簡単とか無料体験といった甘い言葉には注意して」と呼び掛けている。

 相談の内訳は、女性が21件、男性が5件。脱毛部位の周りの皮膚が腫れたというトラブルもあったが、多くは「高額の利用料金を請求されて支払えない」「クーリングオフしたい」などの金銭トラブルだった。中には100万~200万円を請求されたり、関連商品を大量に購入させられたりといった悪質なケースもあったという。

 「無料のつもりで体験したら高額なコースを紹介され、契約しないと帰れない雰囲気だったという人もいた。人生経験の少ない若者が狙われる傾向があり、よく考えずに安易に契約しないように」と同センター。若い世代へ注意喚起するため、アニメーション動画を制作し、ユーチューブで公開している。

 消費生活相談の連絡先は022(268)7867。

河北新報のメルマガ登録はこちら
+W 共に生きる

 「+W」のWには「We」「With」「Woman」「Work」「Worth」などの意味を込めています。暮らし、仕事、ジェンダーなど幅広い話題を取り上げ、多様な価値観が尊重される共生社会の実現を目指します。


企画特集

先頭に戻る