山形「大沼」経営破綻から2年 官民連携の商業活性化策相次ぐ

福袋などが売られ、多くの買い物客でにぎわった「わかぜ初市」=10日、山形市の旧大沼山形本店前

 山形県最後の百貨店「大沼」が経営破綻して2年がたった。空きビルとなった山形市七日町地区の山形本店の再活用方針はまだ示されず、市中心部の活性化が課題になっている。土地、建物を取得した山形市の外郭団体「市都市振興公社」が再整備に着手するまで数年が見込まれる中、官民連携によるマルシェの開催や元テナントの周辺への再出店など、地域に変化を促す動きが相次いでいる。(山形総局・栗原康太朗、奥島ひかる)

軒下の貸し出し開始

 「これほどにぎわうのは久しぶりだ」。旧大沼山形本店の軒下で10日に開かれたマルシェ「わかぜ(若勢)初市」。沿道を埋め尽くす買い物客に、七日町商店街の店主らは目を細めた。

 軒下約40メートルに飲食業や陶器販売など市内外7店がテントを並べた。店主有志が持ち寄った防災食品や飲食店で使える引換券などの入った福袋は50個以上売れた。

 マルシェは七日町商店街振興組合と市都市振興公社が、旧県庁「文翔館」であった年始の伝統行事「初市」に合わせて開催した。市は昨年も「街なかマルシェ」を3回開いたが、官民共催は今回が初めてだった。

 発起人は、大沼にも入っていた菓子製造販売「乃(の)し梅本舗佐藤屋」の佐藤慎太郎社長(42)。テナント時代は大沼の経営陣に、好調な地下食品売り場の一部を1階に移す集客のアイデアなどを進言し続けたが、実現しなかった。経営破綻で建物所有者が公社に変わったことから「商店街活性化のモデルケースになりたい」と市に開催を提案した。

 わかぜ初市を機に、公社は、希望する個人・団体に有料で軒下の貸し出しを始めた。市山形ブランド推進課の高橋大課長は「民間で街を盛り上げようと動いてもらえるのはありがたい」と話す。

 ようやく動きだした短期的な利用策。ただ、土地、建物の長期的な活用方針については、市や公社が慎重に探っており、見えてくるのはまだ先になりそうだ。

 市などは、2030年度に耐用年数を迎える隣接の市立病院済生館の建て替えも見据え、大沼部分を核とした一体的な再整備を検討中。民間事業者の意見を聞くサウンディング型市場調査を昨年8~12月に行い、取りまとめている段階だ。

街の利便性向高めたい

 中心市街地のシンボル再生が当面見込めない中、商業活性化の一翼を担おうと商店主が動きだした。

 大沼の食品売り場で営業していた「佐藤牛肉店」と鮮魚店「大二吉野屋」は、建物向かいに昨年7月開業した鉄骨2階の商業棟「ルルタス」1階に出店した。大沼の閉店はあまりに突然だったとあって、両店は「お客さまにあいさつもできなかった」と悔やみ、七日町に戻った。

 大沼の常連客だった市民は再出店を歓迎する。市内の主婦高橋春美さん(70)は「大沼の閉店後は買い物が不便だったので助かる。日用品や服を買える店もできるといい」と期待する。

 大二吉野屋の大場匡浩代表(44)は「先んじて七日町に店を構えることで、他の専門店が周辺に出店するハードルを下げたい」と強調。「『大沼がなくなったから街の魅力がなくなった』と思われたくない。店が集まることで街の利便性を高めたい」と思い描く。

[百貨店「大沼」を巡る動き]江戸期の1700年創業。郊外大型店との競争や人口減少の影響などで売り上げが落ち込み、2001年に収支が赤字に転落。東京の投資ファンドの支援を受けたり、幹部社員が出資する投資組合が経営に当たったりしたが、20年1月に営業を停止し山形地裁に自己破産を申請した。同12月、山形市都市振興公社が競売入札で旧山形本店の土地、建物を3億8200万円で落札。債権者集会は21年12月までに4回開かれ、一般債権者への配当は見込めない状況だ。

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