<NPOの杜>住民が主役 思いを形に/NPO法人亘理いちごっこ

「震災にもコロナにも負けないぞ!コンサート」のリハーサル風景=1月、宮城県亘理町内
「亘理いちごっこ」が運営する施設に子どもたちも集まってくる=2020年3月

 東日本大震災からの復旧復興や被災者支援に取り組んできたNPO。11年がたつ今、地域のニーズに寄り添って発生当初とは活動を変えつつ、住民と歩む姿勢はそのままに今日の活動に励んでいます。

 発災後、宮城県亘理町にできたNPO法人亘理いちごっこ。代表の馬場照子さん(60)は当時、避難所や仮設住宅で炊き出しを手伝っていました。被災者やボランティアの食事が冷たく、栄養バランスも欠けていると感じたそうです。

 「温かい食事とくつろげる居場所を提供したい」と震災2カ月後の5月、コミュニティー・カフェレストランを町内に開きました。地域住民と全国から駆け付けたボランティアとともに罹災(りさい)証明書持参の人に無料で食事を配り、証明書のない人にも格安で提供しました。

 大切にしていたのは「ありがとう」の声掛け。ただでもらうことに慣れていない住民と、ただで提供することに慣れていない支援者の間にあった壁を取り除く方法でもありました。

 被災児童を対象にした学習サポートに加え、「いちごっこお話聞き隊」と名付けて仮設住宅を戸別訪問し、住民の心に寄り添う活動も実施しました。

 「いちごっこ」の活動が展開される中、団体の活動範囲を離れたサロンやサークルなど、住民が主体となった活動が生まれてきました。「いちごっこ」は住民の「したい」を後押ししています。

 さらに地域の高齢者が安心して暮らせるよう、ごみ捨て、掃除、洗濯、買い物など日常生活上の困り事に対応。住民の「してほしい」ことに応えています。

 馬場さんはある時、「ここ被災地では気軽に音楽を楽しむことも、だんだんできなくなるんだなあ」という住民の嘆息を耳にしました。馬場さんは「主人公は住民」と考えています。住民がしたいこと、してほしいことにニーズがある。そこで「いやいや、自分たちで音楽をやりましょう」と提案しました。

 「震災にもコロナにも負けないぞ!コンサート」のタイトルを掲げ今年1月、隣接する山元町のホールでイベントが実現し、満員御礼の盛況。被災地で音楽を楽しみたいという住民の思いを形にしました。

 活動を続けるには苦労も伴います。個別団体では人と資金の不足という課題を乗り越えるのも難しいためです。助成金の活用、他団体との連携なども念頭に、団体を運営しています。

 団体は現在、保育事業に力を入れています。2018年に町の委託を受け、定員5人の家庭的保育園を開設しました。団体は今後も住民の声にじっと耳を傾けて活動の模索を続け、住民と手を携え地域をつくっていきます。(認定NPO法人杜の伝言板ゆるる 丹野伶菜)

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私たちの周りでは、たくさんの市民団体・NPOが地域課題の解決などを目指して活動しています。「認定NPO法人杜の伝言板ゆるる」と「NPO法人せんだい・みやぎNPOセンター」が交代で担当し、さまざまな団体の活動や地域課題について伝えていきます。

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