山形中心部の「御殿堰」、景観に磨きかかる 「街に誇りを」官民で整備

 山形市中心部で、歴史的な水路「御殿堰(ごてんぜき)」(約17・5キロ)を活用したまちづくりが再び注目されている。民間が「街に対する市民の誇りを高めたい」と景観に合わせた建物を設計したのをきっかけに、市は江戸期の意匠を反映しようと石堤を復活させた。官民で協力し、御殿堰の見どころを増やす動きが進む。

「水の町屋」の脇を流れる御殿堰とリニューアル予定の十一屋(正面)=山形市七日町2丁目 

歴史的価値に着目

 御殿堰は馬見ケ崎川から注がれる五堰(総延長約115キロ)の一つで、市中心部の七日町地区や霞城公園を通る。江戸初期に山形城主の鳥居忠政が城堀、農地などに水を運ぶため築いたとされる。戦後は主にコンクリートで覆われて地下水路となり、人目に触れず流れていた。

 観光資源としての活用は、2010年4月にオープンした山形市七日町の商業施設「水の町屋 七日町御殿堰」が先駆けとなった。建物に沿うように長さ66メートルにわたり石積みで整備。市中心部の名所になったが、その後の約10年間、周辺に目立った動きはなかった。

 歴史的価値に再び着目したのは、空間芸術研究所(山形市)を主宰する建築家矢野英裕さん(54)。七日町と隣り合う旅篭町に17年12月に完成した県税理士会館を設計する際、館内から堰を眺められるように弧を描くようなガラス張りのデザインを考案した。市民らが堰のそばまで歩み寄れる親水広場も設けた。

石積みに整備された御殿堰を見詰める矢野さん。右側に山形県税理士会館が建つ=山形市旅篭町1丁目

60メートルを石積みに

 ただ、御殿堰を管理するのは市や水利組合であり、設計当時、水路そのものには踏み込めなかった。完成から約1年後、市が会館の構造を見て、周辺の水路約60メートルを石積みに変えることを決断。工事を進め、見学デッキと御殿堰の由来を紹介する案内板も新たに設け、21年4月から一般公開している。

 市中心部にはれんが造りの旧県庁「文翔館」などの建造物もある。矢野さんは御殿堰を、山形市の江戸期以降の歴史を感じてもらう場所の一つにしたいと考えていた。「挑戦的な設計だったと思うが、強い意志に会館所有者と市が乗ってくれた」と振り返る。

 将来的な活用計画も浮上している。市は21年10月、「水の町屋」の向かいで営業する菓子店「十一屋」本店のリニューアルに合わせ、敷地沿いの御殿堰55メートルを改修すると発表した。現在は幅2メートルの歩道の地下を流れるが、23年に着工して堰を含む幅5メートルの歩行者空間を生み出す予定だ。

 十一屋があるのは「水の町屋」の下流側。市まちづくり政策課の城戸口真一課長補佐は「『水の町屋』の上流側も整備に着手したい」と意気込む。

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