岩手の最大津波高29・5メートル 県が浸水想定公表 第1波到達、最短14分

 岩手県は29日、日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震と、過去に県内で発生した三つの地震による津波を踏まえ、数百年から1000年に1度とされる最大クラスの「レベル2津波」が発生した場合の浸水想定を公表した。最大津波高は宮古市・小堀内漁港の29・5メートル。第1波の到達時間が最も早いのは、同市・姉吉漁港(津波高24・2メートル)の14分との予測を明らかにした。

 対象とした海岸は24カ所で、112地点の津波高を掲載。市町村ごとの最大津波高は地図の通り。大船渡市が24・7メートル(綾里白浜海岸)、岩泉町が23・9メートル(茂師漁港)、田野畑村23・5メートル(槙木沢海岸)など。浸水域の面積は公表しなかった。

 庁舎が浸水すると想定されたのは、釜石市(最大浸水深9・06メートル)、野田村(7・78メートル)、大槌町(6・90メートル)、久慈市(6・85メートル)、普代村(4・53メートル)、山田町(3・55メートル)、宮古市(2・92メートル)、洋野町(1・90メートル)、陸前高田市(0・24メートル)の9市町村。

 シミュレーションは、両海溝沿いの地震のほか、明治三陸、昭和三陸、東日本大震災の津波を踏まえ、2020年度末時点の地形データを活用し、全防潮堤が破壊された想定で実施。参考資料として、防潮堤全103カ所が破壊されない条件で計算した浸水想定も提示した。

 県河川課の上沢和哉総括課長は「全ての防潮堤が壊れる前提だけを公表すると震災後、復興に向けてまちづくりを進めてきた住民の理解は得られないと考えた」と説明した。

 20年に公表された国の想定では、17年度時点のデータを活用しており、最大津波高は宮古市の29・7メートルだった。今後、県は被害想定の調査を続け、各市町村はハザードマップの見直しなどを進める。

 浸水想定を審議した県津波防災技術専門委員会委員長の南正昭岩手大教授(都市計画)は「津波防災まちづくりが一層進むように浸水想定を活用することが肝要だ」とコメントを出した。

沿岸自治体には危機感  住民避難へ対策見直し 

 岩手県が29日、最大級の津波による浸水想定を公表したことを受け、東日本大震災で被災した沿岸自治体は危機感を新たにした。震災時よりも浸水域が広がる自治体もあり、住民避難に向けた対策の見直しを迫られる。

 野田村は、役場庁舎や災害対策本部の代替施設の一つとなっている久慈消防署野田分署も浸水域に含まれた。大沢勝利総務課長は「浸水エリアが大きい。本部の設置場所も含め、地域防災計画の見直しが必要」と話し、県のデータを基に来年度新たなハザードマップを策定するという。

 防潮堤が壊れない場合の想定について、大沢課長は「あくまで参考資料。構造物は壊れるものとして、住民に避難の重要性を説明する」との姿勢を強調した。

 宮古市の宮古湾内の各地区では震災より津波の高さが増し、浸水範囲が大きく広がる可能性が明らかになった。湾の最奥部に位置する津軽石地区に二つある避難所(津軽石中、津軽石小)はいずれも最大浸水深が5~10メートルに達するため、まず高台の津波避難場所を目指すことが求められる。

 地区の自主防災組織「宮古21防災会」の佐々木睦雄会長(77)は「冬季の被災を考えると浸水域外に避難所を造ってほしいが、財政的に難しいだろう」との見方を示し、「自らで命を守る意識の徹底がますます大切になる」と会員の約390世帯に呼び掛ける。

 釜石市では、破堤した場合の想定で市が市庁舎の建設場所と決めた旧釜石小跡地も浸水するとされた。新市庁舎建設推進室の担当者は「まずは浸水の程度など詳細な数値を確認する。現在の計画に変更が必要かどうかなどを精査したい」との考えを説明した。

 県は、津波浸水想定を基にした被害想定調査を進めており、8月の公表を目指す。検討部会メンバーの斎藤徳美岩手大名誉教授(地域防災)は「浸水想定の公表は入り口にすぎない。県と市町村は、犠牲者をゼロにするための対策を共に考え、実行することが大切だ」と指摘する。

 沿岸部では9市町村で庁舎が浸水する可能性がある。「防災対策の中枢機能が失われてしまう。防水壁を設けるなどの工夫が必要だ」と述べた。

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