宮城の全県立高校、共学化12年 「共に学び合う場」実現できたか

 宮城県内全ての県立高は2010年度、共学化が完了した。県教委が目指した「男女が共に学び合う場」はどう実現されたのか。紆余(うよ)曲折の末に踏み出して12年の現在地を取材した。(竹内明日香)
※学年や年齢は3月時点

2007年に共学化された仙台二高。男女が肩を並べ、自然体で授業を受ける=1月

男子は3分の1

 08年に共学化した宮城一高(仙台市青葉区)。2年の木村海斗さん(17)のクラスには、男子が約3分の1しかいない。

 私服も髪を染めることも許される自由な校風に引かれた。元女子校で女子が多いと聞いてはいたが、同校を選んだ男子の先輩に「学校生活を送る上では気にならない」と言われ、不安はなくなった。 
入学してから「自分が元女子校に通っている」と感じる場面はほとんどない。それでも、毎年7月の「歌合戦」はちょっと違った。

 宮城一女高時代から長年続く名物行事。クラスごとに創意工夫した歌やダンスを競う。衣装もセットも手作りするイベントは「女子がメインになるんだろうな」。ぼんやり思っていた。

宮城一高での合格発表では、男子も女子も笑顔が咲いた=3月16日、仙台市青葉区

消えた「垣根」

 新型コロナウイルスの影響で1年生の時は開催されず、昨年6月、準備が始まった。まだ話したことのない女子もいたが、小道具を作りながら「この色を使ったら」などと自然に会話が生まれ、一体感が強まっていった。

 本番前にはみんなで円陣を組んだ。ボストン茶会事件を題材にしたステージで照明を担当した木村さんは幕が下りた後、何とも言えない達成感に包まれた。

 「男子も女子も、最高の舞台にしようと協力した」。仲間と喜び合い、心の垣根は消え去った。

 県教委は01年、「県立高で性差による入学制限を設けるのは好ましくない」として、県立高の共学化方針を打ち出した。まず仙台市外の8校を対象に(1)単独(2)統合(3)中高一貫校への再編-の形で着手。21校が計16校の共学校に生まれ変わり、10年以上たった。

 「新しく造ったトイレなど設備面で感じることはあるが、それ以外で元男子校と思うことはあまりない」(仙台二高の2年女子)

 「最近、応援団の幹部に女子が入ったのは象徴的な例だと思う」(仙台一高の2年女子)

私学にも波及

 当たり前になった学びやの風景は私学にも波及した。創立135年を迎えた県内唯一の男子校、東北学院中・高(宮城野区)は4月、共学に変わった。

 「グローバル化が進展する今、人種や言語、ジェンダーが異なる人々を理解し、多様性に対応できる力が求められている」。昨年11月にあった中学3年生向けの入試説明会で、阿部恒幸校長(63)は決断の理由をこう説明した。

 申し込みがあった生徒と保護者193組のうち女子は約4割。仙台市の女子中学生は「ジェンダーの視点を中学や高校から取り入れているところがいい」と好印象を持った様子だった。

 共学化に踏み切る際、阿部校長は「OBの猛烈な反対を覚悟していたが、実際にはほとんどなかった」と振り返る。「時代の流れ」と受け入れる人、女性活躍を掲げる経済界に身を置く人も多い。阿部校長は「『これで娘や女の子の孫を入れられる』と喜ぶ人もいた。母校愛をありがたく思った」としみじみと語った。

「どうにもなりません」

 「もう決まっていることですから。会長がいらしても、どうにもなりませんよ」

 男子校だった仙台二高(青葉区)の共学化凍結を求め、2004年7月に県庁を訪れた西澤潤一同窓会長(当時)に、応対した浅野史郎知事(同)は開口一番こう告げた。

 浅野知事は二高出身。同窓会副会長として同席した高橋正道さん(89)は「同窓のよしみと思っていたが、知事との話は何も進まなかった」と振り返った。

共学化凍結を求め、男女別学高校の同窓会が開いた決起集会=04年12月、仙台市青葉区の電力ホール

男女比に偏り

 県教委は05年度、仙台市以外の8校で共学化に取り掛かった。仙台市内の伝統校では、卒業生らによる一律共学化への反対運動が熱を帯びたが、10年度までに共学に移行された。

 ナンバースクール6校の1年生に占める女子生徒の割合はグラフの通り。仙台一高で21年度に初めて5割を超えるなど、男女比は元男子校で半々に近づきつつある一方、元女子校は女子の比率が高い水準で推移する。

 県教委が目標に掲げた「男女が共に学び、理解し、成長し合う場」は実現したのか。一律共学化に反対した宮城三女高OGの伊藤知子さん(70)は「元女子校で男子が少ないアンバランスを県教委は今どう見ているのか」と投げ掛ける。

 完全共学化と全県1学区化から4年後の14年度、県教委の県立高校将来構想審議会は共学化校、創設時からの共学校への実地調査を踏まえた検証報告書をまとめた。

 元女子校での男子入学者の伸び悩みについては「その学校の特色と把握することもできる」と説明。「特色という中では、全ての学校で一律に男女比が同等になる必要は必ずしもない」と強調した。

 不登校率や中途退学率に大きな変化がなく、生徒の進路希望や進路状況に問題がないと総括。共学化後の状況を「おおむね安定した教育活動が行われている」と結論付けた。

検証求める声も

 県政運営17年目の村井嘉浩知事は、3月28日の定例記者会見で「12年たって相当落ち着いてきたのではないか。『元に戻すべきだ』といった意見は私に全く来なくなった」と述べた。

 「今の子どもたちはこの問題に、わだかまりがあるようには感じない」とも言及。初当選時に一律共学化を疑問視した村井知事だが、現状を肯定的に受け止める。

 それでもなお、同窓会関係者を中心に共学化の本格的な検証を求める声は根強い。「多様な人材は本当に育っているのか」(仙台一高OB)「男子校時代に定めた教育目標はそのままでいいのか」(仙台二高OB)といった疑問も少なくない。

 伊東昭代教育長は「大きな弊害や課題は生じていない」として、改めて検証する予定はないと書面で答えた。現場からも「自分の中に母校愛が育っていれば、別学でも共学でも『いい』としか答えない。統計的な処理では意味がない」(校長)などと、検証の困難さを指摘する声が上がる。

 ただ、卒業生の思いをノスタルジーや「昔の話」と片付け、小さなひずみを見逃してしまう恐れはないのか。生徒により良い教育環境を提供するためにも、県内の教育界を揺るがした共学化という原点に節目で立ち返る必要はあるだろう。

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