円安の今こそ海外展開 先読み!とうほく経済ーー桜井鉄矢

「鑑定ビジネス裏表」(2)

 文明論的に見ると時代はどこに向かうのか。多様性の時代に企業や職場はどうあるべきか。「とうほく経済」に求められる視座を週1回、4人の識者・経済人に輪番で発信してもらう。

■中古着物2億着

桜井鉄矢さん

 私は古物商に加えて、中古着物からアロハシャツを作り、百貨店や交流サイト(SNS)で販売する事業を手がけています。業界団体の調査では国内で約2億着もの着物がタンスに眠っていると言われており、実際に古物業界でも大量の中古着物があふれています。

 弊社ではこの中古着物を宮城のお母さんたちの手で洗い、裁断し、福島県の縫製工場のお母さんたちの手でアロハシャツに仕立てます。1着の着物から1着しか作れないので、全てが一点物。復興に挑む姿を侍の不屈の精神に重ねてシャツは「サムライアロハ」と命名し、同名の社名で2016年から販売しています。

 サムライアロハを始めたきっかけは、子どもが小さく外でなかなか働けないお母さんたちに「子育てをしながら家庭でもできる仕事」を提供したかったからという側面と、着物を再活用したいとの願いがありました。ありがたいことに、多くのメディアで取り上げられ、商品の存在だけでなく商品が生まれた背景まで周知いただきました。

 高品質だけでは売れない時代です。私たちも着物のアロハシャツをただ売るのではなく、サムライアロハならではの商品背景やストーリーを伝えることを大切にしています。実際、ここに共感して購入いただくケースが大半です。つまり、商品背景などの付加価値が、ビジネスの成否を決めるのが今の時代だと感じます。

■インスタが有効

 現在サムライアロハの売り上げの半分は、米国と中国を中心とした海外です。最近は円安の影響で海外のお客さまから「なんで値段が下がったの?」と質問されることもあります。円安の影響は今後、原料や物価の値上がりを通じて景気の重荷になるでしょう。ですが、別の見方をすれば海外から日本製品が安く買える好機ともいえます。

 海外展開と聞くとハードルが高いと感じる方も多いと思いますが、やってみると意外と簡単なことに気が付きます。まず販売はインスタグラムが有効です。商品を英語で紹介し、ハッシュタグを活用することで世界中の興味がある人にアクセスできます。翻訳機能が充実しており、言葉の壁で顧客対応に困ったことはありません。

 もちろん注意すべき点もあります。商品の発送手段は複数社を利用した方が安心。コロナ禍によるロックダウンで運送会社によっては発送できない地域もあるからです。また関税にも要注意。海外での委託販売は売れ残りが戻ってくる際、関税が発生します。海外販売は個人客に軸足を置き、事業者向けは委託販売を避けた方が安全でしょう。

 東北にはストーリーが豊かで高品質な品が多いはず。この円安を海外展開のチャンスと捉え、東北から世界へ羽ばたこうではありませんか。
(古物商「仙台買取館」代表取締役=仙台市在住)

[桜井鉄矢(さくらい・てつや)さん]1981年、宮城県岩沼市生まれ。2004年、明治大経営学部卒。古物商大手「大黒屋」に入社し、東京・新宿西口店店長、フランチャイズ事業課長などを歴任した。11年、東日本大震災で実家が被災したため、帰郷して「仙台買取館」を設立。現在は仙台市内でフランチャイズ店として「大黒屋」3店を営む。18年には着物をリメーク販売する「サムライアロハ」も設立し、代表を務める。妻、長男(3)の3人暮らし。

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