宮城で大型風力発電の建設計画相次ぐ 県の「ゾーニングマップ」追い風に

 宮城県内で大型風力発電の建設計画が相次いで持ち上がっている。低炭素社会の実現に向け、県が2018年、風力発電を導入できそうな区域を例示した「ゾーニングマップ」を作成し、事業者に設置を促してきたことが背景にある。一方、景観の悪化や騒音を懸念する周辺住民もいて、各地で反対運動が起きている。(編集局コンテンツセンター・佐藤理史)

一般家庭約1万世帯分の電力を生み出すユーラス石巻ウインドファーム=2020年1月、石巻市

稼働中は気仙沼、石巻の2カ所 建設中は加美の1カ所

 県内で稼働している大型風力発電施設は2カ所。

 第1号は気仙沼市の「気仙沼市民の森風力発電所」。2017年1月に風車4基(最大出力7480キロワット)で運転を始めた。地元の建設業者など3社が事業主体となっている。

 もう一つは石巻市の「ユーラス石巻ウインドファーム」。豊田通商と東京電力が出資するユーラスエナジー(東京)が2019年12月、6基(2万400キロワット)で発電し始めた。

 建設中は加美町の「JRE宮城加美町ウインドファーム」1カ所。事業者はジャパン・リニューアブル・エナジー(東京)で、ENEOS(エネオス)や三井住友信託銀行が主要株主。10基(4万2000キロワット)を設け、2024年4月の運転開始を目指す。

 県は2016~18年、環境省のモデル事業でゾーニングマップを制作した。大崎市と加美町の境界や丸森町筆甫地区など15区域を「導入可能性エリア」として紹介する。地形や環境、各種法律による制約を前もって示し、事業者の負担を軽くするのが狙いだ。

県が2018年5月に公表した風力発電のゾーニングマップ。導入適性エリアは緑色で示され、15カ所が列挙されている

全計画実施の場合、最大出力は女川原発2号機を上回る

 マップが公表された18年以降、事業計画が一気に増えた。県のウェブサイトなどによると、6月15日現在、15の事業が環境影響評価(環境アセスメント)の手続きを進めている。

 全計画が最大限実施された場合、330基近くが建設される。合計の最大出力は120万キロワット以上となり、東北電力が再稼働を計画する女川原発2号機(82万5000キロワット)を上回る。

 環境影響評価の一般的な流れは、事業者が「配慮書」「方法書」「準備書」「評価書」の順に作成し、住民や自治体が各段階で意見を述べる。

アセスは4段階 第3段階は白石など2カ所

 第3段階の「準備書」に進んでいるのは2件ある。

 白石市、七ケ宿町の境界の「七ケ宿長老風力」(仮称、以下同)は6基(2万3000キロワット)を建て、2023年度中に運用を始める予定。事業者はHSE(茨城県、21年に日立サステナブルエナジーから社名変更)で、三菱HCキャピタルや日立パワーソリューションズが主要株主。

 白石市の「白石越河風力」は10基(3万8400キロワット)で2024年度以降の事業開始を見込む。事業者はグローバル金融業マッコーリーグループのAR風力発電(東京)で、東北電力が共同開発に加わる。

第2段階は大和町など11件

 第2段階の「方法書」は11件。

 大和町の「大和風力」は20基(6万キロワット)。前出のユーラスエナジーが2027年以降の事業開始を目指す。

 加美町と大崎市を中心に一部、山形県側にまたがる「宮城山形北部風力」は70~90基(30万キロワット)の計画で、県内最大規模。計画の一部、5基(2万5000キロワット)を分割した「宮城山形北部II風力」もある。

 事業者はグリーンパワーインベストメント(東京)で、主要株主は米風力発電大手パターンエナジーや日本政策投資銀行。同社は加美、色麻両町の「ウィンドファーム八森山」も計画中。2027年12月までに、20基(6万キロワット)で発電を始める考え。

 丸森町の「丸森風力」は15基(6万3000キロワット)を発電する計画で、2027年稼働予定。事業者は前出のジャパン・リニューアブル・エナジー。

 同社は大崎市と加美町で19基(7万5000キロワット)の「大崎鳥屋山(とやさん)風力」も計画していたが、送電線の確保に課題があり、長期的に保留している。

 七ケ宿町の「稲子峠ウィンドファーム」は19基(7万9800キロワット)。太陽光・風力発電などを手がけるGF(徳島県阿南市)が計画し、東北電力が共同調査を進める。2027年度以降の営業運転を見込む。

 栗原、大崎両市にまたがる「六角牧場風力」は20基(7万キロワット)。市民風力発電(札幌市)などが事業目的会社を設立し、東北大川渡フィールドセンターの牧場跡地に計画。2025年度、運転開始を目指す。

 丸森町と福島県伊達市の「丸森筆甫(ひっぽ)風力」は12基(5万400キロワット)。事業者は前出のHSE。

 HSEは石巻市と女川町で「京ケ森風力」も進める。15基(6万3000キロワット)で、2026年度中の発電開始を計画する。

 ほぼ重なる地域で、オリックス(東京)が「女川石巻風力」を展開する。13基(4万9000キロワット)で、2027年末の稼働を予定する。

 加美町の「宮城西部風力」は30基(10万7500キロワット)。シンガポールに拠点を置くヴィーナ・エナジー傘下の日本風力エネルギー(東京)が計画する。

第1段階は七ケ宿など2カ所

 第1段階の「配慮書」は2件。

 川崎町の「川崎ウィンドファーム」は23基(9万6600キロワット)。関西電力(大阪)の計画で、6月末まで配慮書を縦覧している。

 七ケ宿町の「七ケ宿陸上風力」は31基(13万200キロワット)。INFLUX(インフラックス、東京)が事業主体。同社ウェブサイトによると、佐賀県の沖合の玄界灘などで洋上風力発電計画を進めているらしい。

 自治体別にみると、手続き中の計画件数は加美町4、大崎市、七ケ宿町が各3、石巻市、白石市、丸森町、女川町が各2、栗原市、川崎町、大和町、色麻町が各1となっている。

計画中止も2件 「白石鉢森山」は事業者が訴追される

 計画が実現しなかったのは2件。

 山元町の「宮城山元風力」は12基(5万1600キロワット)の事業で、県が事業者を公募した。東急不動産(東京)が計画を進めたが、採算が合わず2020年10月に中止された。

 白石市の「白石鉢森山」は15基(5万1000キロワット)の計画だった。事業主体のテクノシステム(横浜市)の社長らは昨年、太陽光発電設備などを巡るうその名目で複数の金融機関から融資金計約22億円をだまし取ったとして、詐欺罪などで起訴された。

[国内の風力発電の現状]日本風力発電協会(東京)によると、2021年末現在、国内での風力発電の累積導入量は約458万キロワット、2574基。地域別では東北が164万キロワットで圧倒的に多く、次ぐ九州は63万キロワット。都道府県別では1位青森65・6万キロワット、2位秋田64・8万キロワット、3位北海道49・1万キロワットとなっている。

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