原発避難者訴訟 国の責任否定「正義に反する」 いわき市民訴訟原告団長

最高裁判決を聞き、怒号が飛び交う中で無言でたたずむ伊東さん=17日午後3時20分ごろ、東京都千代田区の最高裁前

 今なお住民避難が続く東京電力福島第1原発事故を防げなかった国の責任は「想定外」を理由に判断されなかった。国策として進められた原発が引き起こした事故の責任は、事業者だけにあるのか。「受け入れられない」「肩透かしだ」。避難者らを巡る訴訟で最高裁が国の責任を否定した17日、原告や訴訟関係者からは「避難者に向き合っていない」などと怒りの声が上がった。

「被害者救済に全力」誓う

 「これだけ言い続けても認められない現実は何なのか」

 17日午後3時20分ごろ、最高裁前に立った伊東達也さん(80)=福島県いわき市=の胸中は怒りと嘆きが入り交じった。自主避難を強いられたいわき市民らによる集団訴訟の原告団長。周囲は判決を聞いた関係者の怒号が飛び交う。無言でたたずみ、静かに語った。

 「国策に追随した、正義に反する判決だ。絶対に受け入れられない」

 半世紀近くにわたり原発の危険性を訴えてきた。

 闘いの始まりは1970年代前半にさかのぼる。高校教諭時代、いわき市小名浜の化学工場公害の問題に取り組んだ。東京電力福島第2原発の建設計画に関する勉強会で、原発事故の影響は「(工場の公害とは)比べものにならないぐらい大きい」と専門家に断言され、衝撃を受けた。

 以来、仲間と共に勉強を重ね、国と東電に原発の危険性を訴え続けた。2005年には「1960年のチリ地震級の津波には耐えられない」とし、原発事故の4カ月前には「危険性と不安だけでも共有できないか」と国と東電に申し入れた。が、いずれも受け入れられることはなかった。

 国の大きな壁に何度も阻まれた経験は、伊東さんを慎重にした。弁護団にいくら最高裁での勝算を聞かされても「予断は許さない」との思いはぬぐえなかった。判決に「『裏切られた』ではなく『やはり』。間違いであってくれと願ったが、嫌な予感が当たってしまった」と嘆いた。

 2013年3月に提訴したいわき市民訴訟は「政策形成訴訟」と位置付け、子どもの健康維持を図る施策の確立や全ての原発事故被害者の救済を目的に掲げる。地裁支部判決で国と東電の共同責任の認定を勝ち取り、今も約1500人の原告団と共に控訴審を闘う。

 伊東さんは最高裁判決を「われわれへの影響も避けられない」と受け止める。だが「原発事故の被害が消えて無くなるわけではない。実態を訴え続け、被害者の救済に全力を挙げる」と誓う。

 「くじけませんよ、私は」
(福島総局・高木大毅)

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