仙台市選管、汚名返上なるか 大型選挙でトラブル続き 抜本的対策は先送り

 22日公示、7月10日投開票の参院選に向け、仙台市選管が開票作業の改善に取り組んでいる。大型選挙で不手際が続き、2021年衆院選でも開票トラブルが相次ぎ終了時刻は予定から最大7時間遅れた。負の連鎖を断ち切ろうと職員研修などに力を入れるものの、ミス根絶に向けた抜本的な対策は先送り。くすぶる懸念にふたをしたまま本番に臨む。(報道部・布施谷吉一)

 太白区選管が今月3日に区役所で実施した開票作業の研修会。投票用紙を自動で読み取る分類機の操作方法の習得に主眼を置いた。

 「折れ曲がった票は通さないでください」「いっぱいになった票は水平に取り出して」

 参加した約20人の区職員はメーカーの担当者の説明を聞きながら、真剣な表情で手順を確認した。

太白区選管が実施した投票用紙読み取り分類機の研修会

 21年10月31日の衆院選と同時にあった最高裁裁判官の国民審査で、太白区は投票総数が投票者数より31票多く、再集計に手間取った。分類機を使った集計で、担当者が同じ票を2回集計したミスが原因だった。開票終了は、全国でも最終盤の翌日午前11時3分だった。

 区選管の橋浦亮一事務局長は「研修は開票日に慌てないようにするのが狙い。今回はミスなく作業を進めたい」と気を引き締める。

 市は衆院選で相次いだトラブルの主な要因を、職員の分類機操作の習熟不足と導入に伴う人員削減と考えた。

 参院選では、分類機を衆院選から9台増やし29台にする。「機械操作の習熟度向上が時間短縮の鍵」(市選管)と、太白以外の各区でも職員研修を開いた。

 開票所の人員も19年参院選に近い数に戻す。市選管の斎藤重信事務局長は「衆院選は人員を減らし過ぎた。現場で差配する経験豊富な職員も置く」と策を練る。

 汚名返上を目指す仙台市だが、衆院選の反省は「市と区の選管が毎回行う振り返り」(市選管)にとどまる。第三者が入った本格的な検証は「原因のほとんどは単純ミス。当面の対策はマニュアルの徹底などで足りる」として参院選後に持ち越した。

 14年衆院選の白票水増し発覚以降、トラブル続きの仙台市に再三改善を求めてきた市議会からは「その場しのぎの対応」「原因をしっかり検証するべきだ」など批判の声が上がる。

 郡和子市長は7日の定例記者会見で「(トラブルが相次ぐ状況に)危機感を持たなければならない」と強調する一方、対策については「市選管が取り組んでいる」と述べるにとどめた。

[2021年衆院選の仙台市選管開票トラブル]10月31日の開票作業で(1)青葉区で投票総数と投票者数が17票合わない集計ミス(2)泉区で不明票4票を宮城県選管に報告する際の入力ミス(3)太白区で最高裁裁判官の国民審査を分類機で集計する際の31票の二重計上-などが発覚した。小選挙区は予定より7時間遅い11月1日午前8時半、国民審査は6時間33分遅い同11時3分まで、それぞれ開票終了が遅れた。

ミスの原因徹底追究を 早大マニフェスト研・中村健事務局長

中村健事務局長

[中村健(なかむら・けん)氏]1971年徳島県池田町(現三好市)生まれ。福島大経済学部卒。JR四国入社。99年、27歳で徳島県川島町長に全国最年少首長として初当選。2期目に町村合併で吉野川市が誕生したのに伴い退任した。2007年早大大学院公共経営研究科修了。10年から現職。熊本市政策参与も務める。

 仙台市選管の開票作業はトラブルが続き、終了時刻が予定より大幅に遅れる悪循環から抜け出せない。「民主主義の根幹」を支える選挙事務で、なぜ失態が繰り返されるのか。全国の状況に詳しい早稲田大マニフェスト研究所(東京)の中村健事務局長(50)は「お役所仕事の典型。想定されるミスを市全体で共有するなど、事前の準備に力を入れるべきだ」と訴える。

 仙台市は、2017年衆院選、19年参院選、21年衆院選の直近3回の国政選挙で開票作業のトラブルが続いた。17年衆院選は最大10時間遅れた。21年衆院選は残票の確認不足による投票者数と投票総数の不一致、宮城県選管への報告時の入力ミス、用紙の読み取り分類機による票の二重計上があった(表)。

 「失敗を繰り返すことへの危機意識が欠如している」と中村氏。「製造現場で進む『カイゼン』の考えを取り入れ、ミスの要因を突き詰めて改善につなげた茨城県取手市の例もある。選挙事務は行政の本気度が問われる」と強調する。

 14年衆院選で発覚した白票の水増し以降、市選管は「正確性」に軸足を置く。

 中村氏は「公職選挙法は『正確性』と『迅速性』の両立を求めている」と説明。作業の迅速化に本腰を入れ、不要な手順を洗い出し、ミスを減らした自治体も多いという。

 「市長自ら陣頭指揮を執って対策を講じ、職員の意識向上につなげたケースもある。選挙は選管だけの仕事ではない」と市全体の取り組み強化を求める。

 間近に迫る参院選で、市選管は分類機の台数や人員を増やしながら、突発のトラブルに備える構えだ。

 中村氏は「機械を増やしたり、人数を増やしたりするだけでは根本的な解決にならない。外部の目を入れて、ミスの原因を徹底的に追究しなければ、開票作業のミスは再び起こり得る」と指摘する。

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