10年に及ぶ求職活動の苦労に水を向けると、冷めた口調に諦めがにじんだ。「介護経験に市場価値はないみたいですから」
昨年6月、河北新報朝刊で紹介した元「ヤングケアラー」の男性(34)=岩手県花巻市=は同11月から、北上市の会社で働く。生まれて初めて正社員になった。
仙台市で過ごした高校時代、認知症の祖母の介護に追われた。デイサービスを嫌がる祖母の世話を、ひとり親の母と分担した。身も心も疲れ切り、高校を退学した。
「なぜ施設に入れなかったのですか」「何か資格は取らなかったのですか」
23歳で祖母をみとった後に臨んだ就職活動で、面接官に聞かれた。祖母の面倒を見続けた日々が全否定されたように感じた。パートやアルバイトで生活しながら職探しを続けた。
家族の介護や世話をする子ども、ヤングケアラーへの支援は今でこそ政府が重要施策に位置付けるが、早過ぎた自分は寄る辺なくさまよった。社会を覆う「自助努力」の空気に従った。
就職して約半年のいま、少しずつ生活が安定する中で「家庭を築きたい」という思いが芽生え始めた。ただ「根を下ろすのはここではない」と思う。
「日本に未来があるとは思えない」。最近は海外の移住先をインターネットで調べるのが日課になった。
取り戻せない日常を奪われたのは、新型コロナウイルス禍にあえぐ若者も同じだ。そんな若者たちが、コロナ禍でもろさを露呈した社会を強くしようと自ら動く。
「生存権が守られない社会はおかしい」。2月、仙台市水道局の一室で、東北大2年(現3年)清野華那さん(22)が応対する職員に怒りをぶつけた。料金滞納者への水道供給停止に対して抗議した。
参加したのは、生活困窮者の相談に応じる市内のNPO法人などに関わる学生ボランティアたちだ。滞納者は、パワーハラスメントで職を失い経済的に行き詰まる女性。そんな相手に「命の水」を機械的に止める対応に納得できなかった。
高校時代、低賃金で立場も弱い非正規雇用の母の姿を見て「私が政策を変える」と誓い、官僚を目指して大学に進んだ。コロナ禍でオンラインばかりの授業に歯がゆくなり1年生の冬、「まずは現場を見よう」とNPO法人に飛び込んだ。
初めて相談を受けた外国人留学生は、コロナ禍でアルバイトのシフトを減らされた上、休業手当が未払いだった。「悪いのはあなたではない」。勤務先との交渉を手助けし、未払い賃金を取り返した。同じ境遇にいた他の留学生も続々と声を上げ、うねりを感じた。
6月上旬、NPO法人が開いた勉強会で、参加したZ世代(1990年代半ば以降生まれ)と問題意識を共有した。水道局への抗議は交流サイト(SNS)で多くの批判にさらされた。でも、大事なのは私たち自身が社会の在り方をどうしたいのか、そこに自分がどう参画するかだ。
「誰かに任せても良くならない。私たちには、変えていける力がある」
ひずむ社会と向き合い、声を上げ続けようと思う。
(この連載は報道部・岩田裕貴、大橋大介、片山佐和子、相沢みづきが担当しました)
続く新型コロナウイルス禍、収束しないウクライナ情勢。倦(う)みと不安が社会を覆い、鬱屈(うっくつ)した空気が私たちを包む。参院選を前に民意の現在地を探る。
河北新報社は8~12日、「読者とともに 特別報道室」の無料通信アプリLINE(ライン)で友だち登録する読者に今回の連載内容に関連するアンケートへの協力を呼びかけ、311人から回答を得た。一般の世論調査とは異なる。
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