東北の山に感銘、バックパック製作 山形の山田さん 被災地派遣後に公務員から起業

 東日本大震災の被災地支援が縁で東北の山に魅了された男性が、移住先の山形市を拠点にアウトドア用バックパックの製作、販売を始めた。登山経験を生かして改良を重ね、「東北の山が、中に詰まっている」と表現する製品を全国の「山男」「山ガール」に届ける。

自宅兼工房で自作のバックパックを確かめる山田さん

 バックパックを作っているのは、同市飯田の山田耕右(こうすけ)さん(35)。自宅兼工房で、ナイロンの裁断から縫製まで1人で手がけ、「yamada packs(ヤマダ・パックス)」のブランド名で販売する。

 軽さと大容量の両立を目指した。背負う部分は首、背中、腰に重みが分散するよう設計し、長時間の移動でも疲れにくくした。45リットル(4万1000円)と25リットル(2万5000円)の2種類を製品化した。

 全て手作業のため、2日で1個を完成させるのが精いっぱい。生計を立てるため、サクランボ収穫のアルバイトもしている。「まだ先は見えないが、やりたかった仕事。続けるために何をすべきかしか考えていない」と語る。

 群馬県出身。東京都葛飾区の職員だった2014年、「被災者の役に立ちたい」と志願し、応援職員として宮城県南三陸町に派遣された。公有地の管理などに携わる中で、津波で家族を亡くした被災者らと交流を重ねた。「悲しみを背負いながらも表に出さず、日常を生き抜こうとする覚悟や強さを感じた」と感銘を受けた。

 休日には栗駒山や八幡平などで山歩きを楽しんだ。「東北の山は北アルプスや奥多摩(東京)などに比べ、人が少ない。静かで豊かな自然に身を置くと、怖さとともに生きている実感が湧いた」。被災地で感じた「生きていく強さ」とつながった気がした。

 2年の任期を終えて戻った後も、週末には東北各地の山に通った。「東北で暮らしたい」との思いが募り、18年に区役所を退職。翌年から山形市内のアウトドアショップでアルバイトする傍ら、山歩きに適したバックパックの製造を始め、3年の準備期間を経て独立した。

 「気温差が大きい山歩きには、防寒具やかっぱなど多くの荷物が欠かせない。東北の山で得た経験が、自分が手がける大容量で軽いバックパックの中に詰まっている」。インターネットなどで販売し、自身の山行の模様もインスタグラムで公開している。

自宅兼工房で自作のバックパックを背負う山田さん

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