ユースホステル、宮城に44年ぶりオープン マネジャー夫妻「旅人語らう場に」

 宮城県柴田町に今月1日、「ウェルかも船岡ユースホステル(YH)」がオープンした。県内にYHが誕生するのは実に44年ぶり。マネジャーの加茂弘之さん(64)は20~30代に全国各地のYHで働いた経験から、いつか自分のYHを持とうと夢を温めてきた。新型コロナウイルス下でも「人と出会い、語り合うことには捨て難い魅力がある」と信じる。

談話スペースでユースホステルの魅力を語る弘之さん(右)と潤子さん=柴田町、ウェルかも船岡ユースホステル

 ウェルかも船岡YHは、弘之さんが妻潤子さん(60)と暮らす自宅を改装し、3人部屋を2室、2人部屋を1室設けた。旅行者同士が情報交換できる談話スペースも備え、訪れた人にほっとしてもらえる居心地の良い「旅のわが家」をコンセプトに掲げる。

 弘之さんとYHの出合いは半世紀前。一人旅の高校生を快く受け入れてくれたのが、今は陸前高田市の震災遺構になっている陸前高田YHだった。「いろいろな年齢や職業の人がいて、学校では聞けない話をたくさん聞いた」。単なる宿泊施設とは違う、旅の交流拠点としての温かさが心に残った。

 その後も各地のYHを訪れるうちに運営への興味が高まり、23歳で神奈川県YH協会に入職した。協会直営の箱根早雲山YH(閉館)で働いていた時、客として来たのが潤子さん。当日がちょうど弘之さんの誕生日で、パーティーに誘ったのが縁となり結婚した。

 36歳で生まれ育った宮城に戻り、保養施設の管理者を務めるなどして経験を積んだが夢の実現に至らず、その後は宿泊業とは関わりのない企業に勤めた。それでもYHへの思いは募るばかりで構想をたびたび口にし、周りにはオオカミ少年ならぬ「オオカミじじい」とからかわれた。

定年退職機に自宅を改装、夢実現

 汚名返上の覚悟は、2020年3月の定年退職を機に固まった。「YHは年々減少している。意地を見せたい」。一時は松島、蔵王などの観光地での開業も考えたが「自分たちのホームに、ゆったりとした気持ちで旅行者を迎え入れたい」と自宅を改装する道を選んだ。

 折あしくコロナ禍で宿泊業の先行きは見通せない。ある意味で感染対策に逆行する「旅行者同士のふれあい」というYHの理想を、どうかなえていくかが課題だ。

 気がかりはもう一つ。開業以来、利用者はみな中高年で、若者の来館がない。

 かつての自分のような一人旅の高校生から「泊まれますか」との問い合わせが来るか。「来てほしいね。当然、ウエルカムですよ」。少年のように目を輝かせた。

[メモ]宿泊料は大人4620円(ユースホステル会員3960円)、中学生以下3960円(3300円)。別料金で食事も付けられる。男女別の相部屋が基本だが、現在は感染症対策で個室利用も可能。連絡先は0224(55)0537。

全国のユースホステル、74年の587軒ピーク

 ユースホステル(YH)は団塊世代が大学生だった1970年代に若者向けの宿として人気を博した。宮城県YH協会によると、県内には現在、ウェルかも船岡(柴田町)を含めて4軒のYHがあるが、最盛期には10軒を数えたという。

 県内に新しいYHができるのは、78年に開業した道中庵(どうちゅうあん)YH(仙台市太白区)以来。道中庵YHは古民家風の建物で多くの外国人観光客を集めたが、運営スタッフの高齢化を理由に2019年、営業を終えた。

 宮城以外の東北5県のYHは、福島県が4軒、青森県が2軒で、岩手、秋田、山形の各県が1軒ずつ。

 日本YH協会によると、全国のYHは74年の587軒をピークに、現在は142軒まで減少。特に20~21年は新型コロナウイルスの影響で34軒が閉館した。担当者は「新たに宿泊施設を始める場合、民泊など、YH以外の選択肢が増えた」と説明する。

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