犬猫のマイクロチップ義務化 飼い主がするべきことは? 獣医師に聞いてみた

マイクロチップの実物大サンプル。長さは10ミリほど=仙台市青葉区のおおぜき動物病院
大関宏一郎獣医師

 ペットとして販売する犬と猫の繁殖業者に対し、犬や猫にマイクロチップを装着し、環境省が指定するデータベースに登録することを義務付ける「改正動物愛護法」が、6月1日に施行されました。何が変わったのか、今ペットを飼っている人、これから迎え入れる予定のある人はどうすればいいのか。仙台市獣医師会(宮城野区)の副会長、大関宏一郎獣医師(50)に話を聞きました。(編集局コンテンツセンター・竹内明日香)

迷子や飼育放棄の防止へ

 ―マイクロチップとはどのようなものか。

 マイクロチップは、直径1・2~2・0ミリ、長さ8~12ミリほどの円筒型。生体適合性のあるガラスやプラスチックでできたカプセルの中に、15桁の固有の番号が記録された電子回路が入っている。

 専用の注射器で肩甲骨のやや左側の皮下に注入する。装着は獣医師が行う。装着した部位に、動物病院や自治体の動物管理センターにある専用のリーダーをかざすと、チップに記録されている15桁の番号を読み取れる。

 装着後、番号や飼い主の情報をデータベースに登録する。マイクロチップを装着した犬猫が迷子になって保護されたとき、チップから番号を読み取り、データベースの飼い主情報と照合して、飼い主をたどることができる。ペットの遺棄防止や、災害時の身元判定にも役立つ。

 ―今回の法改正で何が変わったのか。

 繁殖業者にとって、犬猫へのマイクロチップの装着は任意だった。今回の改正で、販売される犬猫には装着が義務化された。

 また、チップの番号や飼育者情報を登録するデータベースは、これまでは日本獣医師会(東京)など民間で運営されているものだった。今回、新たに作られた環境省のデータベースに登録することが必須となった。民間のシステムへの登録は、これまで通り任意となる。

 ―データベースへの登録方法は。

 獣医師が発行する「マイクロチップ装着証明書」を添付し、パソコンやスマートフォンを使ってオンラインで登録申請する。登録後にダウンロードできる「登録証明書」は、今後犬や猫を譲渡する際や手続きに必要になるので、大切に保管する。

 登録料は300円で、クレジットカードやコード決済で支払う。

マイクロチップ装着時専用の注射器(下)。ワクチン注射などに使用する通常の注射器(上)に比べ、針が太い

 ―飼い主がするべきことは。

 登録されている犬や猫の所有者が変わった場合、所有者情報を変更する必要がある。この義務が発生するのが、繁殖業者からペットを買い取った販売業者や飼い主、またペットショップからペットを購入した飼い主だ。購入の際、登録証明書を販売主から受け取り、証明書記載の暗証番号を使ってオンラインで変更する。

 マイクロチップ装着済みの犬や猫を譲り受けた場合も、飼育者情報を変更する必要があるので、登録証明書を忘れずに受け取る。

 5月31日以前から飼っている犬や猫への装着は努力義務となっている。

 ―実際に装着するときはどうするのか。装着後、健康被害はないのか。

 飼っている犬や猫にマイクロチップを装着したい場合は、かかりつけの獣医師に相談する。費用は獣医師によって異なる。

 犬猫にとっては当然痛いが、装着は数秒で終了する。できれば、避妊・去勢手術のときに麻酔がかかった状態で装着すると負担がかからないだろう。

 日本獣医師会では20年以上、マイクロチップ登録事業を行っている。これまでの実績で副作用による障害はほとんど報告されていない。

猫の肩甲骨付近をアルコール綿で消毒した後、チップを装着する様子

記者の飼い猫2匹も装着中

 記者が自宅で飼っている猫、ごま(9)とまろん(9)も今月、マイクロチップを装着した。

 2匹は仙台市動物管理センターで保護されていた捨て猫だったが、2013年5月に記者の家にやってきた。青葉区で「おおぜき動物病院」を開業している大関獣医師は、当時からのかかりつけ医。2匹への装着も担当してもらった。

 大関獣医師はまず、施術のためのキットを見せてくれた。マイクロチップがセットされた専用の注射器が個包装されている。装着証明書に貼り付けるための、15桁の番号を記したシールが付されていた。

実際の装着に使うキット。注射器にはあらかじめマイクロチップがセットされている。左のシールに番号が記される(写真を一部加工しています)

 まずはまろんへの装着から。施術台の上に乗ったまろんの肩甲骨付近を、アルコール綿でしっかり消毒する。この時点ではおとなしくしていた。

 太い注射針でいざ装着し始めると、やはり痛かったのか、抗議するように顔をゆがめ、少し暴れた。そしてあろうことか、大関獣医師の手をガブッ。体を押さえていた看護師がより強く押さえ込み、なんとか装着完了。数秒で終わった。

 「がんばったね」。大関獣医師は読み取り機を取り出し、まろんの背中にかざした。先ほど見せてもらった番号と同じものが、機械の画面に映し出された。施術成功だ。暴れていたまろんも涼しい顔をしている。

 一方ごまは、針が刺さると少しびくっとしたが、まろんとは対照的におとなしくしていた。看護師に顔ごと押さえつけられていたからかもしれないが…。

 かかった金額は、チップ代や施術料を含めて1匹当たり4400円。施術終了後は2匹とも、装着部位を気にするような様子はなく、餌もいつも通り食べていた。

頭ごと押さえつけられているためか暴れない猫。少し緊張しているようにも見える

 法改正に伴い、飼い主はマイクロチップの登録をする必要がある。大関獣医師に発行してもらった「マイクロチップ装着証明書」に記載のQRコードをスマートフォンで読み取ると、環境省の情報登録サイトにアクセスできた。サイトの指示に従い、15桁の番号を打ち込み、装着証明書をスマホで撮影した画像を添付した。

 あとは飼い主の氏名、住所、電話番号と、猫の名前や品種、毛色などを入力する。登録の手数料はクレジットカードで支払った。支払い手続きを終えると、データベースに登録できたことを証明する「登録証明書」がダウンロードできるようになった。これで完了。15分ほどかかった。

 2匹は室内で飼っているが、たまに外に飛び出してしまうこともある。そのまま迷子になってしまうのではないかとヒヤッとした経験も少なくない。チップを装着していれば飼い主の元に戻る確率も高まるとのこと。これで少し安心できるかもしれない。

施術後、装着部位にリーダーをかざす。皮下に埋まったマイクロチップの番号が画面に表示されている(写真を一部加工しています)

「災害時、チップは命綱」被災地・石巻のNPO法人の取り組み続く

 マイクロチップは地震などの自然災害が発生した際、飼い主の手を離れてしまったペットの身元を判別する役割も果たす。

 「『うちの猫は外に出さないから大丈夫』と言う人も多いが、外に出たことがないからこそ自力で帰れなくなることも想定される」。石巻市で動物愛護を支援するNPO法人「アニマルクラブ石巻」の代表阿部智子さん(63)は、マイクロチップをペットたちが飼い主の元に戻るための「命綱」と表現し、装着の普及に努める。

 アニマルクラブ石巻は東日本大震災後の2011年秋から「マイクロチップ普及キャンペーン」に取り組んできた。三菱商事(東京)の復興支援事業を活用し、被災地の犬や猫のマイクロチップ装着を呼び掛けた。飼い主の負担は登録料の1000円のみ。約2年ほど継続した。

 阿部さんはキャンペーンを始めた理由について「震災ではぐれたペットを必死で探し、『遺体でもいいから見つけたい』と言う人々の言葉が頭に残った」と語る。同団体が08年に設立した動物病院では、今もチップの装着を低価格で実施している。

 阿部さんは「マイクロチップは単に犬猫の所有権を示すものではない」と話す。「唯一無二の命を持つ存在として、ペットの行く先を見守るという役割を果たしてこそ、マイクロチップは真に動物たちを守ることができる」と強調する。

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