’22参院選 コメと食料安保 水田農業再生へ具体策を 社説(7/2)

 ロシアによるウクライナ侵攻を契機に食料安全保障が深刻な課題として認識されるようになった。食料自給率は低下し続け、生産者の減少と高齢化に歯止めがかからない。

 穀物を中心にさまざまな食料品の国際価格が急騰し、輸出国では国内向けを優先して輸出を制限する動きが相次いでいる。記録的な円安も加わり「欲しい食料品を欲しいだけ海外から買える」といった楽観論は、見直しを迫られていると言っていい。

 輸入が途絶える「有事」に列島が飢餓に陥る恐れはないのか。国民の生命に直結する問題だ。各党、各候補は主食のコメを中心に具体策を競ってもらいたい。

 ほとんどの主要政党が自給率向上を公約に掲げているものの、肝心の水田農業については足元の「コメ余り」への対応が主なテーマだ。転作を巡る政策の混乱もあって、食料安保に焦点を当てた議論は深まっていない。

 自民党は備蓄の見直しを含む関連予算の確保や資材高騰への影響緩和を訴えているのに対し、立憲民主党や共産党は交付対象を厳格化する政府方針が批判されている「水田活用の直接支払交付金」の恒久化や交付水準の維持を主張している。

 交付金は水田を使って麦や大豆、飼料用作物などの栽培を促す転作支援策の柱だ。

 これまでは水路やあぜを維持するなど一定の条件で支給対象になっていたが、国は今後5年間で一度も水稲を植えない農地を対象から外す方針を示している。

 畑地化した農地を数年ごとに復田していては、コメも転作作物も生産性が上がらない。そもそも転作支援策だったのにコメ作りを維持させる方向に作用する点でも、生産現場や自治体の反発が広がっている。

 今は高騰する小麦や大豆、トウモロコシなどの増産を優先しなくてはならないときだろう。与党は政府方針の撤回を検討すべきだ。

 一方、国民民主党やれいわ新選組など他の野党も主張する生産者の所得補償は、脆弱(ぜいじゃく)になった生産基盤を立て直す上で重要な論点だ。

 2020年度の食料自給率はカロリーベースで過去最低の37%。統計を始めた1965年度の73%から半減した。政府は30年度の目標を45%に据えるが、上昇に転じる兆しは見えない。

 農業を主な仕事とする「基幹的農業従事者」は過去10年間で70万人近く減り、現在は65歳以上が7割を占める。農地面積も約5%減った。

 担い手の裾野を広げない限り、食料安保どころか、国内農業の維持さえおぼつかない現状を直視し、生産力の回復に向け、実効性ある政策に結びつけたい。

 何があっても国民を飢えさせないため、完全自給できるコメを軸に食と農の未来を見据えた議論を求めたい。

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