保育士の収入アップ、公立進まず 補助新制度、東北の申請は1割程度

 新型コロナウイルス禍の最前線で働く人の処遇改善の一環として、保育士の収入を2月分から3%程度(月額9000円)アップさせる政府の補助金事業の活用が公立保育所で進んでいない。全国で申請した市区町村は474と全体の3割弱で、東北はさらに低い水準にある。専門家は自治体への周知不足や制度の使いづらさを指摘する。(報道部・片山佐和子)

周知不足も要因に

 河北新報社が調べた東北での補助金の申請状況(1日現在)はグラフの通り。6県の全227市町村のうち、28市町村(12%)にとどまる。公立の保育所や認定こども園を持たない青森県を除き、5県で公立施設がある計161市町村の17%だった。

 県別では山形が最多の13自治体で、正職員と非正規職員(会計年度任用職員)の内訳や自治体名は公表していない。秋田は7市町村、福島は5市町、宮城は3市町で自治体名は非公表。岩手はゼロだった。

 福島市や南相馬市などは「公務員給与は他の行政職との均衡を考慮する必要がある上、現在は民間の水準も上回る」として正職員の申請は見送り、民間より低水準の任用職員のみ対象にした。能代市は独自の補助を加え、保育士資格を持つ子育て支援センターの任用職員も対象に含めた。

 福島県楢葉町は任用職員のみ申請し、町の補助を追加。給与を月額2万5000円引き上げ、正職員並みにした。担当者は「業務内容がほぼ同じなので格差を是正した。深刻な人材不足の解消につなげたい」と話す。

 郡山市は正職員と任用職員の両方を申請した。担当者は「行政職の中でも保育業務は労働量が多い。変則的な勤務時間や感染症対策の負担も踏まえ、正職員も対象にした」と説明する。

 一方、仙台市は申請を見送った。市の担当者は「正職員は適正な水準を定め、任用職員も正職員との均衡を踏まえている」と必要性の薄さを強調する。

 準備期間の短さも申請が低調な要因になっている。内閣府が各都道府県に事業の要綱を通知したのは昨年12月23日。年末年始を挟んだ上、議会で関連の条例や規則の改正も必要。ある自治体の担当者は「時間的な制約があった」とこぼす。

 宮城学院女子大の磯部裕子教授(幼児教育学)は「これまでの処遇改善は民間が対象。公立は新たに含まれたのに周知が不足し、申請が進まなかったのではないか」と指摘。さらに「一連の改善策は手厚く見えるが、現場には『運用しづらい』との声がある。自治体が職員給与を上げるのは、そう容易な話ではない」と述べ、事業設計に粗さがあるとみている。

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